基本的に電気は溜めることができないということがどういうことなのかがよくわかる話だった。
もちろん少量ならば蓄電池という方法で溜めることはできるし、大規模な蓄電であれば揚水発電という方法もある。しかし、ひとつの電力管内において一日に必要な電力量を蓄えておくだけの手段は今のところ無いし、将来的においても難しいだろう。
だから一日に必要な電力量を予測して、その分だけを発電するということをせざるを得ない。そして予測はあくまで予測にすぎず、リアルタイムで需要と供給のバランスをとり続けるしかないのだ。
この物語は、作中では東都電力となっているが、東京電力管内で電力供給不足が発生し、その結果大規模な停電が起こったとしたらどうなるのかということを2008年にシミュレートしてみせた小説の文庫化。
しかし、群像劇という形なので、電力復旧に奮闘する人々、テロリスト、テロリストを追う警察といった様々な人々の様子が描かれるわりには、現場で働く人々の奮闘を描いた部分は面白いのだが、それ以外の部分がちょっと物語から解離していて展開についていけない面がある。
特にテロリストの最後の行動は綺麗すぎる気がする。犯行動機そのものは理解できるし、気持ちもわからないでもない。しかし、作中で主犯の視点のパートがあればまだしも、その視点がほとんど存在しないので犯人がどのように考えていたのかは読み手が想像するしかない。大規模停電という部分が面白かっただけに最後の綺麗すぎるまとめ方が残念で仕方ない。
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