『鍵』に引き続いて続編の『窓』を読んだ。
続編といっても登場人物が共通で、時系列的に前作の後の話というだけで前作のネタバレ的なものもないし、どちらから先に読んでもそれほど困ることはない。
前作の題名は二重の意味があったけれども、今回はそこまでの多重的な意味はない。犯人は最初からわかってしまっているので犯人探しという意味でのミステリ要素は全くない。もっともそんなものをこの作者に求める方が間違っているのだろう。
順番はあまり意味がないと書いたがこの話を読む人はほとんどの場合前作を読んでいるだろうから、主人公達には悲しい事件、悲惨な事件とは無縁の平和な生活を送って欲しいと思いつつ読み進めるはずなので、犯人と主人公達がどのようにかかわっていくのかという部分にある種のサスペンスを感じながら読むこととなる。
主人公は聴覚障害を持っていて、そのことに対していろいろと悩む。今回はもう一人の聴覚障害者が登場し、環境の違いによる対立が描かれる。同じ障害者同士であっても立場が異なれば、すんなりと理解しあうことすらできなくなってしまう。
そういったものを描きながら同時におぞましい事件を描くという手腕は見事だと思うし、これはこれでなにも文句の付け所はないのだが、しかし、健常者の視点による物語なのだと実感した。健常者だからこそこういう書き方ができるのだ。
うまく説明する事ができないのだが、こういうふうに区別するべきではないのはわかっているがあえて書くとすれば、障害を持った当事者と、障害を持たない健常者との間に存在する、深い深い溝というものを見せつけられた感じがした。
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