アイルランドの小説家、ジョン・バンヴィルが別ネームで書いたミステリ。
買ってからずっと積読だったのだけれども、続編が出てしまったので慌てて読むことにした。
といっても日本じゃジョン・バンヴィルの知名度なんてたかが知れているし、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』をおさえて『海へ帰る日』でブッカー賞を受賞したけれども、ひょっとしたらカズオ・イシグロの方が有名かもしれない。
1950年代のアイルランド、ダブリンを舞台とするミステリ。といっても狭義のミステリといより広義のミステリに近い。
事件の真相はかなり早い段階で予想がつくけれども、予想がつくだけに事件の真相が明らかになるにつれて、無関係だったはずの主人公の過去と家族が実は密接に関係していたことが明らかになり、その真相が真相だけに主人公に肩入れしていると、主人公共々とてもいやな気分にさせられる。
事件の真相そのものにはとりたてて意外性はないけれども、発端となった動機はなかなか面白く、善意から始まっているのにそれが結果として善に結びつかないところが面白い。
そして、主人公は文字通り身も心もボロボロになりながらもおぞましい真実を暴き出し、そして司法の手にゆだねる。
さて、これで安心して続編を読むことが出来る。
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