主人公はわずか三十日の命。
それというのも主人公はオオスズメバチの働き蜂だからだ。
オオスズメバチの働き蜂を擬人化して主人公にし、オオスズメバチの生態を描き出す。
この本を一冊読めばとりあえずオオスズメバチの生態はわかったような気にはなる。で、なおかつ擬人化されたことによってオオスズメバチと人間との生態系の違いというものがはっきりと理解できるのは素晴らしい。
主人公が人間っぽく思考することでオオスズメバチの生命の営みの無慈悲さというか、遺伝子を残すということのみを至上とし、その為には自分たちの女王蜂ですら殺してしまうという行為に対して、それを残酷と感じるのは間違っているのではないかと思わせられてしまう。その揺らぎはSF小説を読んだときに感じるセンスオブワンダーと同じだ。
さらに作者は一歩踏み込んで、主人公に生きることの疑問を考えさせている。通常ならば働き蜂は恋をしない。いや多分女王蜂ですら恋などしないだろう。しかし作者は主人公に恋をさせるのだ。
荒唐無稽かもしれないが、それによって主人公の物語は物語としての深みを増し、わずか三十日の命に輝きを与えるのだ。
コメント
三十日の命を精巧に描く能力。
その理由がやっぱり気になりますね。
映画化されたBOXは、アマチュアボクシングに精通するまでに(笑)。
構成の巧みさ、というか、計算高いんでしょう。
きっと百田さんの性格に違いない。と思ったら・・・。
http://www.birthday-energy.co.jp/ido_syukusaijitu.htm
まさにビンゴ。
しかし適職まで30年はかかるなんて・・・。