『「希望」という名の船にのって』森下一仁

ものすごく久しぶりの森下一仁の新刊。といっても刊行されたのは去年なので、まあ読むのをさぼっていたという面もあるけど。
謎の病原菌に汚染された地球を脱出し、生存可能な新しい星を目指す宇宙船「希望」が物語の舞台となる。主人公は12歳の少年。船が地球を出発したのは15年前だから主人公は宇宙船育ちだ。そして好奇心旺盛な彼はやがて宇宙船の秘密を知ることとなる。
早い段階でこの秘密は明らかになり、巻頭の宇宙船「希望」の見取り図を見て、何か違和感を感じた人も多分その理由を理解する事になるだろう。
ジュブナイルとして書かれたせいか、細かな部分で物足りない部分があるけれども、だからといって手を抜いているわけではなく、書こうとすれば詳しく書くことができたけれども書かなかっただけだ。その省略の度合いが良質なジュブナイルSFという結果になっている。
悪人は出てこないし、絶望的な情況に陥るけれども、登場人物達は絶望に打ちひしがれてはいない。なんだかとても懐かしい雰囲気を感じさせる。
そして、この物語を読んでいる間、「希望」という存在を実感する。
僕たち読者は題名どおり「希望」の船に乗っているのだ。

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