作者いわく「エッセイの体裁をとった小説」とのこと。
一編一編が10ページにも満たない掌編で、どの話から読んでもかまわないし、どの話で本を閉じてもかまわないのだが、止めどきが見つからず、ついついだらだらと最後まで読んでしまう。
読んでいるその瞬間の雰囲気を楽しむタイプの小説なので、読み終えてしばらくすると、どんな話だったのか忘れてしまう。でも、読んでいる最中に感じた雰囲気だけは忘れずにずっと残っている。で、読み終えたにもかかわらず、この雰囲気を味わいたくてまた手に取りたくなるのだ。
振り返ってみると川上弘美の小説を読むのはずいぶんと久しぶりのような気がする。
調べてみると、最後に読んだのは『ニシノユキヒコの恋と冒険』だから、もう5年ほど経っている。
こうして川上弘美の小説を読んでみて、ああ、川上弘美の文章はいいなあ、などと思ったにもかかわらず、なんでこんなにも間隔が空いてしまったのだろうか不思議なのだが、『ニシノユキヒコの恋と冒険』があまり好きではなかったせいだろう。
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