「おしゃまさん」と「めそめそ」が登場する。
アニメの「めそめそ」はしゃべらなかったけれども、こっちはしゃべるし、ムーミンになつくわけではない。
しゃべるからには「めそめそ」は、自分が何物であるかという確固たるものを持っていて、そしてムーミンの物語に登場する限りは、無条件の他者への依存というのは有り得ない。無邪気であったとしても、何かを恐れていたとしても自立している。
まだ冬なのに冬眠から目覚めてしまったムーミントロールの冬という存在の認識の物語であり、同時に一年という季節と時間が自分が寝ている間にもしっかりと存在していて順繰りに回っているのだということを両親の力を借りずにたった一人で知ることになる、いわばムーミントロールの成長物語でもある。
『誠実な詐欺師』のときもそうだったのだけれども、トーベ・ヤンソンが描く冬の世界は、静謐でとても美しい。『ムーミン谷の冬』は、ムーミンの物語が子供に向けて描かれた世界であることもあってか『誠実な詐欺師』の厳しさに比べると、楽しさが加わっている。
そしてクライマックスは春の到来だ。凍り付いた海が溶けだし、ひび割れて、その音が春の大砲となって波が押し寄せるという一大スペクタクルが描き出される。
少し成長したムーミントロールは春を迎え、そしておしゃまさんは旅立ち、いつものムーミン谷の風景がやって来て物語は終わる。
コメント
良かった~