『ぼくは落ち着きがない』長嶋有

高校の部活を扱った小説は数々あれども、おそらくもっとも何も活動らしい活動をしない部活を扱った小説なんじゃないかな。
いやしかし、図書部は図書の貸し出しや書籍の整理等、立派な活動をしているのだから、活動らしい活動をしないというのは図書部に失礼だろう。
ただ、野球部、陸上部などの運動系の部活はともかくとして、新聞部、演劇部といった文化系の部活と比べても、どちらかといえば地味になる。作中でも文芸部が登場するけれども、文芸部が存在すれば図書部は文芸部と比較されがちになるだろうし、図書部と文芸部の間になんらかの確執が発生しても不思議ではない気もする。
まあそれはさておき、世間一般の図書部に対するイメージはどうなのかはわからないけれども、自分が抱いている図書部のイメージと同じように、この物語でも事件らしい事件は起こらず、とある高校生の日常的な風景を描いている。
しかし、大きなうねりはないけれども、小さなうねりはあり、主人公の日常は淡々と流れていくけれども、その中で主人公は青春をしている。その青春は細部の積み重ねによって成り立っていて、その細部が面白い。だから読んでいて心地よいのだ。
写写丸とカッパに捧げられた冒頭の献辞が笑えた。

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