『ムーミン谷の夏祭り』トーベ・ヤンソン

ムーミンママがおもちゃの船を作っているところから物語は始まり、そしてそのおもちゃの船で物語は幕を閉じる。
そして船という存在が暗示するがごとくムーミン谷は水没し、ムーミントロールとその仲間達は水没した家を抜けだし、水に浮かび漂っていた劇場に移りそして漂い続ける。
冷静に状況判断をすればとんでもなく悲惨な情況なのだけれどもムーミントロール達はそんな悲惨な情況などまったく気にはしない。どんな情況であってもムーミントロールはムーミントロールで自分を見失わないのだ。
前作の『ムーミンパパの思いで』で初めて登場したミイが最初から最後まで出っぱなしで、スニフは我が儘を言いたい放題だったのに対してミイは人を嫌な気分にさせるようなことを言いたい放題だ。で、スニフは今回一切登場しない。前作の最後でスニフは両親達と旅に出かけたようにも受け取ることができるので、登場しなくても矛盾はないし、ムーミンシリーズにおける時系列というのはおそらく発表順でいいのではないかという気もする。
そしてムーミントロールのセリフも相変わらず素晴らしい。
スノークのお嬢さんがこう言う。
「わたしがすごくきれいで、あんたがわたしをさらってしまうというあそびをしない?」
こんなセリフをぬけぬけと言ってのけるスノークのお嬢さんもスノークのお嬢さんだが、
「ぼく、あそびたいのかどうか、じぶんでもよくわからないんだよ」
ムーミントロールの切り返しが素晴らしい。
もちろん、こんなことを言われればスノークのお嬢さんだって傷つくのだが、ムーミントロールはフォローも忘れない。
「きみがすごくきれいだ、なんてことは、あそびにしなくていいんだよ。きみは、いまだって、ちゃんときれいなんだもの。ぼく、たいていきみをさらっちゃうよ。あしただけどさ」
最後の一言が素敵だ。
一方、スナフキンはスナフキンで、公園に立てられている禁止事項を書いた立て札を片っ端から引っこ抜いてしまう。さらにはそれをみて怒った公園の番人にニョロニョロを仕掛けさせて感電させてしまう始末だ。
自由を愛し、物事を禁止する言葉が大嫌いなのだからそんなことをするのだが、その生き方の前にはモラルなど一切存在しない。

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