佐藤友哉が「姥捨て」というものをどういう風に書いたのかちょっとばかり期待をしたけれども、姥捨てという初期設定が同じだけで『楢山節考』とはまったくの別物であり、何をどんな風に書いたとしても佐藤友哉の小説に変わりはなかったので楽しめた。
リアリティというものを考えれば、老婆達の会話はつっこみ所が満載の噴飯物でしかないけれども、そんなリアリティなど吹き飛ばしてしまうくらいのパワーはある。というか70歳を越えた老婆をこんな風に描いて最後まで押し切ってしまう手法は一回限りの禁じ手かもしれないけれども、それでも次の作品も期待したくなるんだよな。
ページを開いて圧倒されるのは50人もの老婆の名前が書かれた登場人物表で、これだけの人数を登場させて大丈夫なのかと思ったが、読んでみて安心した。
とにかく死ぬ。熊に襲われて死ぬ。疫病で死ぬ。熊と戦って死ぬ。仲間割れして死ぬ。死ぬときは二三人まとめて死ぬ
それでいて死に対する軽さが無いのは登場人物達が「姥捨て」というそれまで暮らしていた社会での死を迎えた死後の世界の話だからだろう。社会的に殺されてそれでもまだ生きているという状況下でもう一度死を迎える。
そんな世界を描いた佐藤友哉も凄いのだがしかし、それ以上に凄いのは解説の法月綸太郎だ。本文を読まなくってもいいんじゃないかと思うくらいにこの『デンデラ』を解体し読み解いていて、先に法月綸太郎の解説を読んでしまったことを後悔してしまったくらいに凄まじかった。
『Zの悲劇』の解説といい、これといい、法月綸太郎は(良い意味で)どうかしているんじゃないかと思う。
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