どこへと向かっていくのか予想もつかない物語がとうとう完結した。
前巻から新たに登場した人物の暴走の顛末が引き続き描かれるのだけれども、暴走する彼自身がこの街に元から住んでいた住人であり、元受刑者達ではないという点、そして地位のある人物であるという点が、それまでのあくまで受刑者たちの問題だけだったところから街全体、というよりもこの街に住む人々全員の問題へと移り変わっていく。
その一方で、受刑者達の抱える問題も残っていて、要するに彼らが過去に犯した自分たちの罪を反省し更生しえたのかという問題であるのだけれども、結局のところはっきりとした答えが出ないまま物語は終わる。
それまでのさまざまな登場人物達の不穏な行動や、予兆といったものは明確に答えの出ないままで、読者にその解釈を委ねたままで終わってしまうし、このプロジェクト自体の謎や、成否に関してもはっきりしないままなんだけれども、登場人物の一人がつぶやいた、「どうしたって受け付けられない人間と、どうにかして共存していける人間がいる」というセリフがこの物語そのものを言い表しているのだろう。
つまり、罪を償うとか更生するとかといった問題ではなく、自分の住む場所に共存していくことができるのかどうかということで、出来ない人間はよそへ行くしかないし、また場合によっては排除されてしまうのだ。
そんな、善悪とは違う視点から描いているから、読んでいて不安にさせられるし、見てはいけない闇の中を見させられた感覚におそわれるのだ。もちろんそんな暗闇だけではなく、ほんの少しの光もある。
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