『人造救世主 ギニー・ピッグス』小林泰三

ひたすら論理的に戦う小説である。
敵は何らかの超能力を持ち、しかも再生能力を持っているので致命的な攻撃を受けない限り傷ついても再生してしまう。
一方、主人公の方は何の超能力も持たないし、再生能力もない。必然的に、武力による戦いではなく、知力による戦いになってしまうのだ。
そして、生死をかけた戦いの最中であってもひたすら論理的に思考し、その思考を口に出す。とにかく、お前は口に出さないと思考することができないのかと思うくらいに、会話が多い。その点では、いつもどおりの小林泰三の小説であり、作者名を伏せられたまま読んだとしても、作者が誰なのか言い当てることは確実にできそうだ。
しかし、ネットの感想を見回すと賛否両論というよりもどちらかというと否の方が多い。
確かに、読んでいて違和感を感じる。論理的な会話は小林泰三に間違いないのだが、なにか違う。小林泰三の邪悪な部分が暴走しているというか、いつもならば押さえてコントロールしているのに今回はコントロール仕切れていないという感じだ。
しかし、それさえも実は作者の計算済みな部分なのかもしれないという考えも否定しきれないところが邪悪なところだろう。
何巻まで続くのかわからないけれども、釈然としない部分がありながら、結局最後の巻まで読んでしまうだろうなあ。

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