クレイグ・ライスの書く本に付けられてもおかしくない雰囲気の題名にそそられて手に取ってみたのだが、表紙の絵からしてクレイグ・ライスっぽい可能性はほとんど感じられず、裏表紙のあらすじを見て、心理×法廷サスペンスということで自分の好みには合いそうもないのがはっきりとわかったのだけれども、それでも手に取ってみたのだから解説ぐらいは読んでみようと思って、読んでそして買ってしまった。
解説の中の、コーネル・ウールリッチやジム・トンプスンといった名前や、肩入れできる登場人物がいないという文章に惹かれてしまったのだ。
物語は、三部構成になっていてあえて分類分けするならば、それぞれ、心理サスペンス・リーガルサスペンス・法廷ミステリという雰囲気になっている。これはこれで一つの特徴でもあるが、一番の特徴はやはり、登場人物全員が心の中に闇を抱えているという点だろう。
無論、闇といってもさまざまだ。
主人公は、闇が闇に引き寄せられたのだなどとつぶやく人間であるし、主人公の兄も、弟想いの兄であるけれども、過去にいろいろとあって、必ずしも善人ではない。
主人公を追い詰めようとする元検事補も、不正を正す行為をした結果、エリートから転落し、そのことを悔やみ続けてひねくれた人生を送っている始末だ。
事件そのものは題名どおり、予想がつく範囲に着地するだろう。
事件は明解であるのに登場人物の心の中の闇は明解ではない。作者はあの手この手で登場人物の心の闇を物語に差し込む。特に、主人公を追い詰める元検事補の転落エピソードなどは元検事補がこんな性格になっても仕方ないと思わせるほど残酷だ。しかしだからといって元検事補に共感するかといえば全く持ってそんなことは無い。
一番闇を抱えているのはひょっとしたら作者自身ではないのか。
そんな気持ちにさせる物語だった。
『いたって明解な殺人』グラント・ジャーキンス

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