『夢の化石』今敏

大友克洋が漫画を描かなくなってしまってからもうかなりの時が経ってしまった。
大友克洋というと『童夢』や『AKIRA』とSF漫画というイメージがあるけれども、わたしにとっては『童夢』を描く以前の『ショート・ピース』とか『ハイウェイスター』とかの方が印象深い、というのはちょっと嘘だけれども、でも読んでいて愉快なのはこちのほうなのだ。
大友克洋のアシスタントをしていた高寺彰彦の漫画も好きだった。『サルタン防衛隊』なんかは最高に馬鹿馬鹿しくって素敵だった。しかし、高寺彰彦の新作も読むことが出来なくなって久しい。
内藤曜ノ介が『ラヂオヘッド』を出したとき、渇望していた大友克洋の漫画分を少し補うことが出来たのだけれども、『ラヂオヘッド』は一巻と付いていながら未だに二巻が出ていない。三年後に絵柄が変わってしまった『みんなのきせき』が出たが、こちらも二巻目は未だに出ていない。
去年、今敏が亡くなった。アニメーション監督だとばかり思っていたので、漫画家だったことは知らなかった。どこか大友克洋っぽいなあと興味をそそられ、手にとって驚いた。
そこに大友克洋の系譜があったからだ。そして、大友克洋のアシスタントもしていたということを初めて知った。
漫画家として後期の『OPUS』あたりになると大友克洋から離れた独自の世界になってくるが、今回の短編集はまだ大友克洋の影響の範囲内にある。
良いか悪いかは抜きにして、ひさしぶりに堪能したのは事実だ。
しかし、大友克洋の系譜はどうして途絶えてしまうのだろう。

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