見えないところで起こっている何か

去年の後半から治療し続けていた歯の治療がようやく終わった。
ある日突然奥歯が痛み出し、一日経っても痛みは取れず我慢できなくなったために仕方なく歯医者に行くことにした。仕方なくといっても歯医者が嫌いだから仕方なく行ったということではない。行くのが面倒だから仕方なく行ったのだ。
なので、一度行ってしまえば、二度三度行くのも変わりはなく、悪い部分を全て治療してもらうことにした……ら、ほとんど毎週通い続けて三ヶ月ほどかかってしまった。
しかし、歯医者で治療を受けるたびに思うのは、自分の口の中で一体何が行われているのだろうかということだ。
不気味な音を立てる機械で自分の歯が削り取られていく。その振動が骨を通じて体で感じる。削り取る時間が数秒で済めばいいのだが、大抵はもっと時間がかかる。音と振動から想像するとなんだかもの凄く削り取られているような不安感がどんどんと高まっていく。
そんなに削り取ると歯が無くなってしまうんじゃないですか、先生。と心配になって思わず聞いてみたくなる。
で、削り取るのが終わって、口を濯いでくださいといわれたときにすかさず舌でどのくらい削り取られたのか確認して、予想したほど削られてはいなかったことに安堵するのだ。
歯の型を取っているときも気が休めない。
型を取る間、寝ころんでいると、型を取るためのシリコンゴムのようなものが、徐々に喉の奥へと流れ込むのだ。ほっておけばシリコンゴムは喉の奥へと流れ込んでしまう。早く固まれ早く固まれと思いながら、舌でその流れをせき止めようと努力しなければいけない。
隣の席では子供が泣きながら治療を受けている。虫歯の部分を削り取っている最中のようだ。
もう止めて、と泣き叫んでいるが、先生は、もう少しで終わるからね、と言うセリフを言い、削り取る手を止めない。先生がこのセリフを言うのはこれで三回目だ。
五回目の、もう少しで終わるからねを言ったとき、子供は、もう止めてから、もう止めてください、に変わった。
もう少しで終わるからねと五回も言われて、まだ終わらないのであれば懇願するしかないだろう。子供も実社会から何かを学んだようだった。
エリック・マコーマックの『ミステリウム』が届くまでの間、何を読もうか迷っていたが、ちょうど良い厚さの柴村仁の『4 Girls』があったのでそれを読んでいたら『ミステリウム』が届いた。
『4 Girls』を読み終えて、『ミステリウム』を読み始める。

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