狂風世界

今日は少し風が強い。
といっても強風にはほど遠い強さだが。
風が吹いていると洗濯物がよく乾く。
いま住んでいるところは洗濯物を干す場所が東側にあるので、午後になると日があたらなくなる。
ただでさえ太陽が低く、日の短いこの時期だから、妻は風が吹くと洗濯物がよく乾くからいいねとつぶやく。
強風は勘弁してもらいたいが、このくらいの風が吹いていると少し気分がほがらかになってくる。
で、強風といえばこの間、J・G・バラードの『狂風世界』をようやく読んだ。
白状してしまうとバラードは、短編をいくつか読んだだけで、ほとんど読んでいない。世界が破滅する類の破滅SFが好きな癖にバラードの破滅三部作も読んでいない。
といっても読もうとしなかったわけではない。バラードを読まなかったのは『結晶世界』を読もうとして挫折してしまったせいだ。
『結晶世界』を読もうとしたのはたぶん、中学三年のころだったと思う。あの当時の自分の読解力を思えば、挫折してもしかたがなかっただろうと思う。そんなわけで、傑作といわれる『結晶世界』が駄目だったので破滅三部作も手を出そうとは思わなくなってしまったのである。
しかし、バラードの新刊が出るたびに、いつか読んでやろうとは思い続けていた。
で、今年復刊した『狂風世界』を手に入れたので読んだわけだ。
世界の破滅を扱っていながら破滅三部作の仲間に入れてもらえない理由はよくわからないのだが、この歳になってみるとバラードもなんとか楽しめるようになった気もする。
作品の中では世界に狂風が吹く理由はあきらかにされないし、登場人物たちが右往左往しているうちに唐突に風が弱まってきて、そして物語は終わる。曰くありげな人物が狂風に対抗する巨大な建築物を作ったりするけれども、それが人類を救う役に立つわけでもなく、たんに自分の力を見せつけただけ程度のもので、物語の舞台から退場してしまう。
中学生のころに読んだら面白くも何ともない話にしか見えなかっただろうけれど、今ならばけっこう楽しむことができた。
さて、次はどれを読もうか。

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