心の値段

妻は、生き続けている限り、再発しないために薬を飲み続けなくてはいけない。
統合失調症の場合、薬を飲まない場合の再発率はかなり高いとされている。この統計データに疑心暗鬼な部分もないではないが、しかし、だからといって薬を飲む事を止める決断ができるかどうかといえば、それは出来ない。妻は止めたがっているが。
そして、薬は無料ではない。
妻が一日に飲む薬の値段は、今のところ約900円弱である。
40年生きるとした場合、現状維持として考えて、この先約1300万円弱のお金がかかることとなる。
無論、これは保険が適用されない場合の金額であって、いわゆる十割負担だった場合の計算だ。
通常の三割負担の場合は約390万円となる。
精神通院医療の場合は自立支援医療の対象となるので、対象条件を満たす場合、一割負担が適用され、約130万円まで下がる。
実際にはこれに診察料が加算されるので、支払わなくてはいけない金額はこの約二倍くらいである。
この金額が、妻が心を失わないための、つまり、心の値段だ。