こっちへお入り

今年じゅうに買う本はあと三冊だろうと書いたくせに、昼休みに書店へ行って平安寿子の『こっちへお入り』を買ってしまう。
ついでにYahooオークションで伊井直行の『本当の名前を捜しつづける彫刻の話』を落札してしまう。
それはともかくとして、平安寿子の本を買うのは今回が初めてだ。
読んだことも無い初めての作者の本なのに、表紙を見たとたん、これは面白いに違いない、というカンが働いた。
手にとって、裏表紙のあらすじを見る。
落語を扱った内容だ。
面白いに違いないというカンが確信に変わる。
落語が好きである。どちらかといえば新作落語よりは古典落語の方が好きだ。そして、落語そのもの以上に落語に関わる人たちが好きだ。
地方に住んでいると、実際に寄席で見るという機会がほとんど無い。テレビで見るしかない。しかしテレビだと、いつでも見ることが出来るというわけではない。
そういった物足りなさから滝田ゆうの『滝田ゆう落語劇場』などを読んだりしたこともあったけれど、これはこれで面白かったが、落語とは微妙に異なる、あくまで滝田ゆうの世界だった。
次に、結城昌治の『志ん生一代』を読んだ。
活字の世界で落語家という人生に触れることの面白さを覚えたあたりから、落語に関わる人たちの物語を読むようになった。そして好きになった。
新作落語よりも古典落語が好きなのは、今も昔も人は大して変わりはしないのだということを感じさせてくれるからだ。
変わりがないから、昔と今は繋がっている。
そう思うことで、不安定な自分の足場はちょっとだけ安定した足場に変わってくれる。
今は昔と地続きで、いろいろなものが積み重なって今となっている。そう思うと少しやさしさに包まれた気持ちになる。
落語は、そんな気持ちにさせてくれて、なおかつ笑わせてくれる。
だからきっと、『こっちへお入り』も、わたしを楽しませてくれるに違いない。
『悪魔に食われろ青尾蝿』を読み終えて、『予告探偵』と『レッド・プラネット』と『こっちへお入り』を読み始める。

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