S-Fマガジン 創刊七百号記念特大号は、それまでの記念号が小説主体の特集記念号だったのに対して、小説の方は国内篇・海外篇という文庫二冊のアンソロジー集にまかせておいて、本誌のほうではそれまでの小説以外の記事の中から埋もれたままになっていたインタビューや時評やコラム、はたまた広告などの中から取捨選択した七十本の記事を集めた本だったので驚いた。一時期、毎月買っていたことがあったので、読んだことのある記事もそれなりにあったけれども、さすがにこれだけの分量の記事を一気に読むと圧倒されるし、それらの記事が約五十五年という長い歳月を感じさせるだけになお一層感慨深いものがある。
その他、歴代編集長インタビューが面白く、これだったら歴代の編集者全員にインタビューをしてもらっても良かったのにと思ったくらいで、特に太陽風交点事件の当事者でもあった今岡清のインタビューで、今岡清の視点でみた太陽風交点事件が語られていたことも興味ぶかい内容だった。
おかげで、もう一つの企画であるオールタイム・ベストが霞んでしまった気もするけれど、実際、オールタイム・ベストの結果がどうだったかというと、前回と比べるとかなり変動があって意外な結果となった部分もあるけれども、それでも、作品を見ればベストに入っておかしくはない作品ばかりなので、これはこれで納得はいく。ただそれだけに、読んでない作品が少なかったので、その点がちょっと物足りなかったりもした。贅沢な悩みだね。
とりあえず僕が投票したのはこんな感じ。六百号記念号の時とほとんど代わり映えしないのでちょっと反省しているのと、以前にも書いたけれども津原泰水の「五色の舟」を入れなかったことが心残りだったけれど、僕が入れなくっても結果として一位になったからまあいいか。
○国内長篇ベスト5
1.我が月は緑 今日泊亜蘭
2.上弦の月を喰べる獅子 夢枕獏
3.旅のラゴス 筒井康隆
4.敵は海賊・海賊版 神林長平
5.マイナス・ゼロ 広瀬正
○国内短篇ベスト5
1.踊るバビロン 牧野修
2.山の上の交響楽 中井紀夫
3.吹原和彦の軌跡 梶尾真治
4.人喰い病 石黒達昌
5.遠近法 山尾悠子
○国内作家ベスト5
1.今日泊亜蘭
2.神林長平
3.山尾悠子
4.飛浩隆
5.草上仁
○海外長篇ベスト5
1.火星夜想曲 イアン・マクドナルド
2.ハイペリオン ダン・シモンズ
3.ノ-ストリリア コードウェイナー・スミス
4.竜を狩る種族 ジャック・ヴァンス
5.時間封鎖 ロバート・チャールズ・ウィルスン
○海外短篇ベスト5
1.鏖戦 グレッグ・ベア
2.しあわせの理由 グレッグ・イーガン
3.アルファ・ラルファ大通り コードウェイナー・スミス
4.彼らがやって来た前日に メアリ・スーン・リー
5.地獄とは神の不在なり テッド・チャン
○海外作家ベスト5
1.コードウェイナー・スミス
2.ジャック・ヴァンス
3.テッド・チャン
4.スタニスワフ・レム
5.パオロ・バチガルピ
牧野修の「踊るバビロン」を入れる人なんて僕ぐらいだろうと思っていたらベスト五十以内に入っていて驚いた。
『ハイペリオン』は相変わらず、単独、二部作、四部作で票が別々になっていたけれど、僕の場合はあくまで『ハイペリオン』単体だけでの投票。ロバート・チャールズ・ウィルスンの『時間封鎖』も同様で、要するにしっかりと結末まで書いて完結させていなくっても、その途中の部分がワクワクさせてくれたらそれだけで傑作と呼んでしまってもいいじゃないかと思っているからだ。
メアリ・スーン・リーの「彼らがやって来た前日に」はやっぱりランク外だったけれども、収録された記事の中でこの短編に関して言及されていた記事があったので、それだけでちょっと満足した。
まだまだ先のことだけれども、八百号記念号が楽しみだね。
コメント
石黒達昌の人喰い病 図書館でずーっと気になってたんですが この機会に読んでみます。筒井康隆の作品も また読んでみたいな・・・・
higaさんこんにちは。
石黒達昌は架空の生態系をノンフィクション風に描く話が多く、この「人喰い病」もそんな感じなので万人受けする作風ではないんですが、それほどページ数もない本なので、騙されたと思って読んでみてください。