もういちど歩き出せるか?

少し書いてみようという気持ちになった。
だいぶ前から、少し書き始めてみようとは思っていたのだけれども、そのたびに妻の容態が悪化したりしてなかなか書き始めるところまでいかなかった。
妻の病気はまだ治っていない。
いろいろとあった。
妻の様態は良くなったり悪くなったりを繰り返している。振り子のように。
多分、この先も今とは変わらないだろう。
時折、妻は、死にたいとつぶやく。
依然として、この世界は、妻にとって苦しい世界のままだ。
仕事から帰って、家の窓に明かりがついているのを確認するとホッとする。
今日も生きていてくれていたことを感謝する。
毎日が死と隣り合わせの人生だ。
しかし、誰だって、いつ死ぬかなんてわからない。
私の従兄弟は学校から帰って来たときに母親が居間で倒れていた。
少しだけ、鈍感になるしかないのだろう。
少しでも笑顔を見せてくれる瞬間があればそれでいい。
一日の中で、ほんの一瞬、妻が笑顔を見せてくれればそれだけでいい。
その笑顔が誰に向けてのものでも構わない。
その一瞬だけは、妻はこの世界の苦しみから抜け出せているからだ。
この病気は、理性を奪い取ってしまうのね。
妻は私に、そう言った。
私の乏しい理性を奪い取ってしまう。
妻にかけてあげる言葉が出てこない。
黙ってうなずくことだけしかできない。
なんて、情けない男なのだと思う。
それでも私と妻は、この世界の片隅で生き続けている。
多分、私がふたたび書き始めてみようと思ったのは、私と妻が生きているということを、見知らぬ誰かに知ってもらいたいからかもしれない。
書くことで、少し、歩きだそう。
そして、妻のために出来る何かを、少しでも多く探してみよう。

コメント

  1. F より:

    ずっと以前から本の感想を読ませて頂いていました。
    ずっと巡回サイトとしてお気に入り登録したまま、毎日毎日通っていました。
    おかえりなさい。

  2. qumay より:

     思うようにならない状況が続き、ささいな出来事に苛立ちを覚えることの多い日々を過ごしていらっしゃるのではないかと気がかりでした。
     どんなに辛いことがあっても、その辛ささえも冷静に分析できる貴方ですから、毎日何かを書き残していくという行為は、きっとTakeman さんの心に安らぎを与えてくれると信じていますよ。
     再スタートおめでとうございます。そしてお帰りなさい。待っていましたよ。

  3. Jay より:

    情けないことなんかないですよ。

  4. Takeman より:

    一年以上放置していたサイトにコメントを頂くとは思ってもいませんでした。
    再開するのをずっと待っていた方々、申し訳ありませんでした。
    元気になったら書き始めてみようと思っていたのですが、なかなか思うようにいきません。
    元気な時もあれば、空元気の時もあり、そして空元気すら出せないときもあります。
    おかえりなさいと言ってくださったのに、また途絶えてしまうかもしれません。
    でも、人生なんてそんなものでしょう。
    どうなるかわからないことを心配しても仕方ありません。そう思うようになりました。
    この脇道を少しづつ歩いていきます。
    コメントをくださった方々、ありがとうございます。
    直接メッセージやメールを送ってくださった方々、ありがとうございます。
    個別にお返事はいたしませんが、ご勘弁ください。

  5. とらべった より:

    このブログに出会い、奥さんに対する気持ちの大きさにとても惹かれて、ブックマークにしてずっと更新を待っていました。
    お帰りなさい。

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