経過報告50

10/24

今日は妻の外泊日だ。
今回の外泊が無事に終われば今月末の退院がほぼ決まる。
病室へ行くと妻は既に外泊の準備が完了しており、いつでも病院を出ることが出来る状態だった。
そんなに気分も悪くはなさそうだ。もっとも良くもなさそうだった。
いきなり、今回の外泊を二泊に出来ないか聞いてくる。しかしそれは無理な相談だ。
妻はようやく薬を飲むことの大切さを理解してくれたようなのだが、まだこの病気に関しての知識は乏しい。入院している状態からいきなり外の世界に出て、日常生活をすることが精神的にどれほどの負担がかかるかまでは理解出来ていない。一泊だけでも無事に生活ができるのかそれさえも予測出来ない事柄なのだ。
外泊申請書を書いて、病院の外へ。
覚悟をしていたことなのだが、妻は私を非難してくる。
前回ほどではなかったし、今回は覚悟をしていたのでそれほどダメージは受けなかったのだが、しかし、このまま退院させてしまってよいものなのか不安にもなってくる。
どうも、薬に関しておかしな知識を披露している患者さんがいるようで、妻はその患者さんの言うことを無条件に受け入れてしまっている。まともに考えれば馬鹿馬鹿しいでたらめであることがわかるはずなのに、どうしてそんな陰謀論を信じてしまうのか不思議だ。
まだ、階下の人たちが脳波を取っていると思いこんでいる部分もある。声が聞こえないので、妄想をそれ以上発展させることはないようなのだが、やはり、この問題は根が深いようだ。今のままでは薬の量を減らすことはとうてい出来ないだろう。もっとも、薬の量を減らすということは数年単位でやることなので、焦っても仕方がない。声がほぼ聞こえなくなっただけでも良しとしなければいけないだろう。
妻の実家から手紙の返答が返ってくる。
私の出した質問にはいっさい回答がないのには驚いた。よくもまあここまではぐらかすことができるものだと感心してしまったが、私に任せるという内容ではあったので、そのあたりは安心してもいいかもしれないと思う。もちろん、妻は病院に関しての偏見や妄想を持ち続けているので、その妻の妄想を素直に信じ切ってしまって、また一悶着あるのかもしれないが、その時はその時でまた考えることにしよう。妻の妄想癖は親譲りなのだと思いたくなってしまう。
午後、妻はコンサートへ出かける。
本当は主治医の許可を得ないといけないのだろうけれども、しかし、許可が出るのか定かではない。そしてそこまで私は非情にもなれない。一抹の不安を抱えながらも、駅まで妻を送っていく。好きなことが出来るのだから多分大丈夫だろうと思ってしまう。
それが良いことなのか悪いことなのか私にはわからない。
しかし、何も問題は無いはずだ。
アパートに帰ってきて、猛烈な睡魔に襲われる。
相当に疲れていたのだろう。
夜になって迎えに来てというメールが届く。たまたま目が覚めたおかげで気づいたのだが、見過ごすところだった。
駅まで行くと妻はご機嫌な状態で車に乗り込んできた。今日、外泊出来て良かったと思う。
が、しかし、喜んでばかりも言ってられなかった。電車を待つ間、妻は実家に電話したらしい。そしてその電話の内容が問題だった。義母か義弟のどちらが言ったのかまでは聞かなかったが、妻が飲んでいる薬は副作用が強いなどと言いやがったのである。
いったいなんなんだ、こいつらはと思う。
副作用はたしかに注意しなければいけない。しかし、この病気は病識を持たない人が多い。だから自分が何故薬を飲まなければいけないのかを理解している人は少ない。病識を持っていればいいのだが、病識を持っていない人は服用の重要性を理解していないのだ。そんな状態の人に、あなたが飲んでいる薬は副作用が強いなどと言ってしまうことがどういう事になってしまうのか理解出来ていないのだろう。
そもそも、どんな病気であっても病人に不安感を与えるようなことをして病気が治ると思っているのだろうか。
妻一人だけでも手を焼いている状態だ。薬と上手につき合う方法を模索している状態だ。そして薬の副作用も心配している状態だ。そんな状態で、邪魔する人間がいるのでは私に出来る事柄にも限界がある。
妻の実家には再度手紙を送ることにする。
妻はコンサートの興奮と久しぶりのアパートでの夜ということでなかなか寝ようとはしない。
私はその分、妻と話をすることが出来るので大歓迎なのだが、入院中の妻は9時過ぎには就寝していたのだ。あまり不規則な生活をさせるのは良くないだろう。
妻に、そろそろ寝ようと促す。
夕食後に飲む薬は飲んだようなのだが、就寝前に飲む薬は飲んでくれるのだろうか。
妻の挙動を追いかけているのだが、飲もうとしない。
寝室へ向かい、本当に寝ようとしたので、妻に薬を飲むように言う。
飲まなきゃ駄目という妻を説得し、薬を飲ませる。
退院後の服用に暗雲が立ちこめた感じだ。
ひょっとしたら口腔内崩壊錠であることが原因で飲みたがらないかもしれない。
普通の錠剤タイプに変えてもらうことも検討してみよう。

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