前作の、といっても物語的にはまったく関連性はないのだけれども、『猫間地獄のわらべ歌』と同じ系列のミステリ。
前作でも登場人物がいきなり物語の世界化から抜け出てメタ的な形でミステリに関するお約束事を話しだしたのだが、今回は抜け出すことさえせずにシームレスにいきなりミステリに関するお約束事の会話をし始めるので、挑戦的でもある。
さらには物語の冒頭で自分が村に帰らなければ自分の姉妹にとんでもないことが起こると言って一人の男が亡くなるという展開は横溝正史の『獄門島』を彷彿させる展開で、横溝正史の世界を江戸時代で再現させたかのような雰囲気をかもしださせながらも、そんな期待を裏切るような展開をするあたりも、自覚的なんだろけれど、読者に対して挑戦的だ。
さらに今回は純粋なミステリの世界だけではなく、クトゥルー的な雰囲気まで装って、オカルトなのかそれともSFなのか、はたまた『小人たちがこわいので』のジョン ブラックバーンのようなジャンルミックスの話になるのかという面白さがある。結果としてどこに着地するのかは実際に読んでもらうとして、何でもありな展開でありながらも意外と堅実というかしっかりとした真相でごちゃごちゃしていた前作よりは一本筋の通った物語になっている。
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