いやあ、タミフルですよ、タミフル。初めて飲ましたよ。
カプセルだったからどんな味なのか判りませんでしたけど。
それにしても、インフルエンザが流行る前、タミフルは危険だって騒いでいた奴、今頃どうしているんだろう。
そりゃ、タミフルが原因と思われる副作用で亡くなられてしまった方に対しては何も言うつもりもないし、タミフルは危険だという声を上げてもらっても良いと思う。
でもねえ、馬鹿じゃねえのって言いたいよ。
今朝目が覚めてね、やっぱりのどの奥がいがらっぽいままで、微熱もあるんですよ。おまけに胸もちょっと苦しい感じ。
ひょっとして肺炎かなって、まあ肺炎なんてなった事なんて無いんですけど、胸が苦しいと肺炎かなって思っちゃうんですよ。で、肺炎だとさすがにやばいよなあ、ってことで実家の近くの病院に予約の電話を入れたんです。何故実家かっていうと今年の春も風邪ひいてそこの病院にかかったもんですから初診料を取られずに済む。
電話をかけて微熱があるから見て貰えますかって聞くと、今から来てくださいって、まあこっちとしては都合のいい返事をしてくれたんですが、マスクをしてきてくれって言ってくるの。
マスクう~~?
どこにあるのかさっぱり判らない。途中で買っていくかって思ったけど、自分の車の中に一つあったことを思い出して、なんでもいいやマスクに見えるものならと病院へ。
受付で、体温計を手渡され、「外のベンチで計ってください」
はあ?
意味が分からなかったので、後ろを振り返って、ロビーのいすを指さして、ここですかっていうと、看護師さん、背を乗り出してその向こうを指さすんですよ。で、そしたらあるの、ベンチが。もちろん病院の外。
そこまで俺をばい菌扱いするのかって思ったけど、すごすごと病院の外へ出てベンチで体温計ってくると悲しくなってくるんですよ。屋根があるから濡れずにすむけど外は雨。おまけに肌寒い。熱があって具合が悪いのに、こんな病人に優しくない環境で体温を計っていりゃ誰だってそう思いますよ。
私の悲しい気持ちが通じたのか体温計は予想以上の早さでピピピとなったので、再び受付へ。
今度はおしっこ取って下さいっていうんでトイレへ。外でしてくださいって言われなくって良かったよ。まあさすがにそれはしないだろうなあ。
でその後は自分の車の中で待ち状態。しばらくして看護師さんがやってきて、問診してくれるけど、場所はやっぱり外のベンチ。車の中で、なんてエロいことは考えませんでした。こんなに具合が悪いと。
インフルエンザがはやっているのですいませんと言ってくれたんで、そうだよなあ、って納得したんだけど、最初っからそう言って体温計を渡してくれればここまで憤慨しなくってもよかったのにと思う。点滴も希望しますって言ったら、下痢をしてなくって水分を取ることができるのであればポカリスエットを飲んでくれれば良いです。点滴の中身と同じですからって、そのくらい知ってるよ。
でも点滴打てばなんとなく栄養が体に補充されたって気分になるじゃないですか、おまじないですよおまじない。そんな見も蓋もないこと言って希望の火を消さないでください。
で、その後、血液検査するからってことで採血。もちろん外のベンチ。血液検査じゃインフルエンザかどうかはわからないけれども、これがOKなら普通の風邪らしい。病院の中で待つことも出来そうだ。
結果を待っていると、今度は鼻水を取りたいって言ってくる。なんかどんどんインフルエンザに近づいているんですけど。
鼻水出せますか、って聞いてきて、出せないと綿棒を鼻の穴の中につっこんでぐりぐりしないといけないんですけど、っていってきやがるんで、出せますと即答。サランラップを広げて手渡され、これをティッシュと思って鼻をかんでくださいだって。
あなたサランラップで鼻をかんだことあります?興味があったら一度やってみて下さいよ。
で、そのまま広げたサランラップの上の私の体液に看護師さんは綿棒をなすりつけてぐりぐりやるの。そんなこと、ここでやるなよって思ったんだけど、「そのサランラップはご自宅で処分してください」だって。そんなにばい菌を病院の中に入れたくないのか、俺の家ならばい菌があっても平気なのか、そりゃ今の俺はばい菌の巣になっているかもしれないけどさ、お前の家を俺のご自宅にしてやろうかと思ったけど、口には出さない。外に出っぱなしだったので、車の中で待っていていいですか、って聞いて車の中へ。
しばらくしてようやく院内へ入れてくれました。
診察室へ入ると、先生はまだいません。で、机の上に私の名前が書かれた検査キットのような物が置かれているんですよ、そりゃ気になるでしょ。なんたらかたらA+Bとかってキット名が書かれていて、C、A、Bと書かれた枠があるの。おそるおそる覗くと、Cのところに赤い線が出ているんですよ。赤い線が。AやBじゃないけど、どうみてもCです。
C型インフルエンザなのか、ってそんな物があるかどうかはわからないけど、自分が入院もしくはアパートで孤立ってことを想像しました。ちょっとまずすぎる展開だよ。
しばらくして先生がやってきて、検査の結果は陰性でしたって言ってくれて、目の前の検査キットのCの赤いラインの謎は解けないままだったけど、先生がそういうんだったらまあ良いか。
でも新型ウィルスの場合、陰性とのままという可能性もあるから、タミフル飲みますかって聞いてくるの。
え、タミフル、って思っていると、先生、後ろの看護師さんと、自覚症状がでてからそろそろ48時間、ぎりぎりかなあ、なんて話していてもの凄く不安なんですけど。
治るんならば何でも飲みます、ってことでタミフルも出してもらう。
「様態が変化したらまた来てください」って言われて「はい」と答える。
近くの薬局でタミフルとその他の薬を買って、そこの薬剤師さんなんかうれしそうなの、やっぱりタミフルだからかなあ、と思ったけど、気のせいかも。
タミフル飲んで、車を運転しても大丈夫かって聞くと大丈夫ですって答えるので、車の中ですかさずタミフルを飲んで、妻のいる病院へ。
昨日の今日だったから不安だったけど、今日の妻は気丈でした。
「何で来たのよ、用なんてないでしょ」
「どうせ一ヶ月は出られないんだし」
「あなたについていく気なんてないわ」
「あなたのそばになんていたくはなかったわよ、ここしばらくは。一人でアパート借りて同居を止めるつもりだったのについてきちゃって」
ひどい言われようで、昨日の泣いて懇願する妻とは大違いだ。個人的には昨日の妻の方がいいのだが、今の具合の悪い状態では今日の方がずっといい。
「仕事はどうしたの」って聞いてくるので、
「風邪ひいて休むことにした」って答えると、
「そんなに休むと首になるわよ」だって。
「その時は仕方ないよ、病院だって行って来たんだし」
「病院?あなたも廃人になるわよ」
私が行ったのは内科ですけど。って思ったけど口には出さなかった。
「百円ちょうだい、洗濯できないのよ」
「看護師さんに言えばお金をくれるけど」というのだが、
「そんなの私の勝手でしょ」
どうもしっかりと理解していないらしい。今度メモに書いてもってこよう。
財布の中の百円玉を全て妻に手渡しして、黙っていると、
「風邪ひいているんならもう帰ったら。あなたがそばにいるとイライラするの」
昨日、先生が言ってくれたことは本当なのかと思ってしまう。病気がそう言わせているって言葉が。
「明日は来れないかもしれない」と言うけれども、妻は理解していないようだった。
帰りにスーパーへ行き、今日と明日の分の食料を買い込む、といっても弁当や鍋焼きうどん、冷凍ピラフといったものだ。ポカリスエットを買うことを思い出し、スポーツ飲料のコーナーへ行くけれども、見あたらない。機能飲料とかかれたペットボトルがあったので、これでいいやと買い物かごに入れる。
で、アパートに帰って、機能飲料を飲もうと成分を見るとカロリーオフって書いてあるんですよ、カロリーオフ。
カロリーを吸収したいから買ったのに、でも、カロリーオフ。
洗濯物を室内に干して、パジャマに着替えて布団に入るけど、これが寂しい。ラジオを引っ張り出してつけて、寝ようとするんだけど、眠れない。今日の文体がやけにハイなのはタミフルのせいじゃないんです。いつも通りの文体だと悲しくなって寂しくなるから、こんな文体にしてるんですよ。
具合が悪いから寝なきゃいけないんだけど、全然眠れない。
妻が、ここ最近、今まで以上に頭が冴え渡っているの、っていった感じが何となく分かった気がする。頭は冴えたままで眠れないんです。
まいったね、これは。
そろそろどん底かなって思ってたけど、まだまだ底じゃありませんでした。
体の具合が悪くなると悪いことしか考えないようになってくるねえ。
明日は今日よりも良い日でありますように。
と書いて今日は終わりにしようと思ったのですが、妻の実家から電話がかかってきたわけですよ。これが。
昨日あれだけ説明して納得してもらったのに、また電話。向こうで良い病院が見つかったなどという可能性は低い。1日で調べきれるわけがない。
で、何を言うかといえば、明日、妻を病院から連れだして、実家へ戻らせるっていうわけですよ。
何じゃそりゃ、ってなわけで、こっちも風邪で喉が痛くって熱もある。頭を休めさせたいのにまた説明。
妻を入院させたときに、主治医の先生が、「実家のご両親への説得が大変ですよ」と言った意味がよく分かった。
「私の同意がなければ退院出来ません。受け入れ先の病院は見つかったのですか?」
「見つかったとしても、その先生の治療方針とかわかるのですか」
「その先生が入院させる必要があると言ったとき、入院させることができますか」
義母は、出来ると答えた。
冗談じゃない。そう簡単に出来ると言えるものじゃない。
「妻は絶対に入院を拒否するでしょう。その時は任意入院から、お義母さんの同意による医療保護入院になります。その時、妻が泣き叫んだり、懇願したり、暴れたりしても入院させることが出来ますか?」
「連れて帰るわねえ、でもこっちに来れば安心できるじゃない」
「一時的には安心できます。でも妻は階下の人間が秘密組織の人間で、自分を狙っていると思っているんです。そちらに戻っても、近所に新しい人が引っ越ししてきて、その人が人つきあいの悪い人だったら、妻は秘密組織が追っ手を差し向けてきたと絶対に考えます。どこへ行っても、この妄想を取り除かない限り無理なんです」
「じゃあ、廃人になってしまったとき責任取れるんですか?」
こっちが逆に聞きたいよ。
「病院で治療させたから百パーセント治るって思っているんですか?癌だって手術しても治らない場合があるでしょう。一ヶ月の入院で廃人になる可能性がどのくらいあると思いますか?」
かれこれ三十分近く話してようやく納得してくれる。しかし、今日の所はと言ったところだろう。義母は説得させたけど義弟は説得させていない。そもそも、昨日だって義母を説得させたのだ。誰だろう、よけいな忠言をしてくる奴は。
今の治療が本当に正しいのか何てそんな物判るわけがない。だから今だってこうして悩み続けているし、勉強している。
しばらくして父から電話。
父は全ての責任を自分で負いかぶろうと思うなといってくれる。心配してくれる気持ちはありがたい。ありがたいけれども、全ての責任を負いかぶるしかないのだ。医療保護入院の保護者となった時点で、妻を退院させるか、先生の言うとおり入院させるか、自分が決めなければいけない。たった一言だけで180度変わる。あまりにもシンプルで、そしてそこに全ての責任がかかっている。誰にもこの責任を分担してもらう事なんて出来ない。病気が治らなかったら、入院させた私に非難が来る。どうあがいたって全ての責任は自分がかぶるしかないのだ。
先生の治療方針に疑問を持ったら提言すればいい、聞き入れてくれなかったら退院させ別の病院という手段もやむを得ない、疑問を持たなかったなら先生を信じるしかない。しかし、どれが正解なんてものは判るはずもない、ひとたび考え込んでしまったら、あまりにも重い重圧に押しつぶされてしまいそうになる。
経過報告26
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