経過報告24

9/28

朝、昨日の疲れがほとんどとれないまま目が覚める。
昨日はそれほど動き回ったつもりはなかったけれども、以前は途中で昼寝などをしていたことを考えると疲れが残ったままでも不思議ではない。
生活リズムが激変してしまったせいか物忘れが酷くなってしまったので、思いついたこと思い出したことはすかさずメモを取ることにする。
今日、妻に持っていく物を紙袋に入れ、出かける用意が出来た後、妻のパート先の会社に電話をかける。
病気のことは曖昧にぼかし、事情を説明して、明日訪問する約束をする。
途中、処方箋薬局に寄り、土曜日貰わなかった痔の薬を買い、病院へと向かう。
妻は自分の想像の斜め上を行くことをしてくれていた。
閉鎖病棟の扉を開けてくれた看護師さんに、いつも通り荷物の中身を確認してもらったところで、荷物は預かりますねと言われた。何となく嫌な予感がする。別の看護師さんが来て、ご主人さんですねと訪ねられる。
「昨日の夜……」
嫌な予感は的中した。
夜の薬を飲むとき、妻は薬を舌の下に隠してしまったそうだ。無論、看護師は口の中を確認するのですぐさまばれる。そして妻は暴れ、当直医の指示で保護室へと入れられてしまっていた。
今日は面会が出来ない。
そんなことだったら、電話してくれても良いのにと思ったのだが、電話連絡してもらっても、病院へ駆けつけるには時間がかかる。たどり着いた時には保護室へ入れられて面会できない状態だろう。
結局私は何もできないのだ。
妻の病状は私が想像している以上にやっかいなのかもしれない。
夜、薬を飲んで徘徊している他の患者さんに対しての恐怖と、自分が徘徊してしまうことの恐怖から、薬を飲むことを拒んでしまったのかと思い、釈迦に説法なのも理解しているが、午後に病院へ電話し、そのことを話す。
電話では、落ち着いているということだったが、信用できないんだよなあ。病院側が信用できないというのではなくって妻が落ち着いたふりをしているかもしれないということだ。
もっとも、保護室になどいてもらいたくはないので、落ち着いていれば早くそこから出してもらえるだろうから、その点は良いかとも思う。
私の母は、妻を入院させたら少しは自分の体も休めることができるだろうなどと言っていたのだが、とんでもない。
今まで妻がやってくれていた家事をし、といっても食事は出来合の物で、せいぜいが洗濯くらいだが、午前中は面会に行き、そして仕事。仕事が終われば帰宅して統合失調症に関しての勉強と、ネットを検索して妻と同じ症状に関する調査。
そして一日の出来事をこうしてまとめて、面会中の妻の言動や仕草から今後の対応について考える。ときおり最悪の事態を考えすぎて泣いてしまう。
もう一人自分が欲しいくらいだ。
いろいろと調べていくうちに、アスペルガー症候群もしくはAD/HD(注意欠陥・多動性障害)の可能性も浮かび上がる。
幻聴による妄想はあるものの、妻の性格や行動を考えると、この可能性も否定できない。もっとも、幻聴には薬物療法を用いるしかないのだろうけれども。
明日は妻の弟と一緒に主治医の面談だ。妻の実家に電話をし、義弟の来る時間を聞く。
主治医の先生に質問する内容を箇条書きにまとめる。
聞きたいことは沢山ある。悪い返事が返ってくる可能性も覚悟する。といってもとうてい覚悟など出来やしないが。明日は妻に会えたらいいなと思う。たとえ罵詈雑言を浴びせられても、言葉だけでも聞きたい。千羽鶴にはほど遠い百羽鶴を手渡ししたい。
さっきから鼻の奥が乾燥した感じがする。ほぼ確実に風邪をひいてしまったようだ。
喉系の風邪薬を飲み、早めに寝ることにする。

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