神林長平著
「時間蝕」から4編中3編が収録されているので、未収録作品は3編しかありません。どうしてこのような形になったのか判りませんが、「時間蝕」を読んでいる人間からしてみるとコストパフォーマンスが悪いです。80年代に書かれた短編で、未収録のものはまだあるはずなのですが…
まぁ、それはともかく作品はというと、どこをとっても神林長平。とくに光学異性体、PAB、永久刑事などとおなじみの存在、モチーフが登場するのでなおいっそうその感が強いです。神林長平が好きな人向けで、これから神林長平を読もうと思っている人向けではありません。
唯一のユーモアSF「痩せても狼」が一番の収穫かなといったところです。貨幣が脂肪として蓄積される世界。太った人間が金持ちであり、痩せた人間は貧乏人という設定が面白い。貨幣のやりとりは脂肪吸引機みたいなものでズブズブと吸引したり押し込まれたりするのです。想像するだけで全身がむずむずしてきそうですが。
まぁ、それはともかく作品はというと、どこをとっても神林長平。とくに光学異性体、PAB、永久刑事などとおなじみの存在、モチーフが登場するのでなおいっそうその感が強いです。神林長平が好きな人向けで、これから神林長平を読もうと思っている人向けではありません。
唯一のユーモアSF「痩せても狼」が一番の収穫かなといったところです。貨幣が脂肪として蓄積される世界。太った人間が金持ちであり、痩せた人間は貧乏人という設定が面白い。貨幣のやりとりは脂肪吸引機みたいなものでズブズブと吸引したり押し込まれたりするのです。想像するだけで全身がむずむずしてきそうですが。
コメント
#5「鏡像の敵」
鏡像の敵
神林 長平
このところ独り神林長平フェアをやっているので、かなり神林率の高い読書になっている。だけどまだ絶版になった著書を捜し求めるほどではない。今回は「鏡像の敵」、2005年に発売された神林長平初期傑作集だ。収録されているのは以下の6作品。
渇眠
痩せても狼
ハイブリアンズ
兎の夢
ここにいるよ
鏡像の敵
この本には、相対化する装置としての鏡が感じられる作品が集められている。「鏡像の敵」とは、なんて意味深長な言葉なんだ、と思う。ちょっと違うが「人のふり見て我がふり直せ」というように他人の存在は、自分を写す鏡だ。ここでは、他人の行動から自らへの注意を促す、という意味ではない。他人すなわち彼に対する評価は、そのまま自らの価値観すなわち自分自身を表しているということだ。夢から無意識を探るように、他人から自分を見つけることができる。単純な話、相手が人でなくても「花を美しいと思う人は、美しい心の持ち主です」といえるかもしれないし、皮肉な話「誰かを醜いと思うのは、醜い人間だけだ」なんていうのも考えられる。我以外皆教師也、だ。
表題作「鏡像の敵」では、そんな相対化された自己との闘いが描かれている。駆逐装甲動力スーツを身に纏い、人間の憎悪を喰らう怪魔と闘う「わたし」は、やっとの思いで敵に肉薄する。しかし敵は自らを「わたし」の憎悪だという。『自分を撃て。おまえ自身を』と。果たして「わたし」とは、怪魔といかなる者なのか、というお話。まさかの結末で、一気に腑に落ちた。