去年あたりから、「ハヤカワ名作セレクション」やら、「異色作家短篇集」やらと昔の作品が復刊されるようになりましたが、昔の本だからといって絶版になって手に入らないというわけではありません。
ウィルスン・タッカー作 / 矢野 徹訳
ウィルソン・タッカーの「アメリカ滅亡」は久保書店のQ-TブックスというSFシリーズなのですが、奥付が1979年1月と今から27年も昔に出た本です。
風の白猿神を買ったとき、その本の奥付が1995年11月と10年前の本だったのにも驚かされたのですが、世の中にはもっと上手がいます。
さすがにこのシリーズを棚に並べている書店は無いと思いますが、版元には在庫があるので注文すれば購入できるのです。しかも当時の値段で。というわけでQ-Tブックスシリーズはいくつかはまだ現役で入手出来る状態となっております。もっとも名作ばかりというわけではありませんが…。
ウィルソン・タッカーというと「明日プラスX」とか「静かな太陽の年」などと時間もののSFを書く作家という印象が強く、「アメリカ滅亡」も何らかの形で時間SFになるのだろうと勝手に想像していたら全然違いました。タイトルどおり、バリバリの破滅SFです。
原題は「The Long Loud Silence」で、ハヤカワSFシリーズから「長く大いなる沈黙」という原題に沿った題名で出ていたのですが、改題したのは「長く大いなる沈黙」ではインパクトが小さいからなのでしょうか。個人的には「長く大いなる沈黙」の題のほうが好きですが。
同じ題材を扱ったものとして、同シリーズにも入っているアルジス・バドリスの「第3次大戦後のアメリカ大陸」が思い出されるのですが、あちらは主人公とその子孫達が社会を復興していく話だったのに対して、こちらは復興しません。
ミシシッピー川を堺に東側が壊滅し、細菌がばらまかれてしまった為に国の機能は西側に移り、生き延びた人間がいるにも関わらず東側は見捨てられてしまいます。主人公は陸軍兵士ですが、30才の誕生日に泥酔してしまったため東側に取り残されてしまいます。主人公はごく普通の人間。正義感があるわけでもなく、みんなで協力して社会を復興しようとするわけでもなく、だた単純に生き延びてそして西側へ渡るためにいろいろと努力をするだけです。その為には策略を企てたり、人を騙したりするのにも躊躇しません。悪人ではないけれども善人ではないのです。
終盤、主人公は川の向こう側へ渡ることに成功するのですが、接触した人間が紫色になって死んだことから、自分が細菌の保菌者であることを知ります。そして苦労して渡った川を再び泳ぎ、東側へと戻っていくのです。西側は徐々に復興していくのですが、東側は徐々に荒廃していきます。
そして物語は最後、主人公は物語の冒頭で遭遇した女性と再び出合い、一緒に生活をしようとするのですが、あくまで利用価値があるからだと考えた結果にすぎないという何ともいえない終わり方をします。
風の白猿神を買ったとき、その本の奥付が1995年11月と10年前の本だったのにも驚かされたのですが、世の中にはもっと上手がいます。
さすがにこのシリーズを棚に並べている書店は無いと思いますが、版元には在庫があるので注文すれば購入できるのです。しかも当時の値段で。というわけでQ-Tブックスシリーズはいくつかはまだ現役で入手出来る状態となっております。もっとも名作ばかりというわけではありませんが…。
ウィルソン・タッカーというと「明日プラスX」とか「静かな太陽の年」などと時間もののSFを書く作家という印象が強く、「アメリカ滅亡」も何らかの形で時間SFになるのだろうと勝手に想像していたら全然違いました。タイトルどおり、バリバリの破滅SFです。
原題は「The Long Loud Silence」で、ハヤカワSFシリーズから「長く大いなる沈黙」という原題に沿った題名で出ていたのですが、改題したのは「長く大いなる沈黙」ではインパクトが小さいからなのでしょうか。個人的には「長く大いなる沈黙」の題のほうが好きですが。
同じ題材を扱ったものとして、同シリーズにも入っているアルジス・バドリスの「第3次大戦後のアメリカ大陸」が思い出されるのですが、あちらは主人公とその子孫達が社会を復興していく話だったのに対して、こちらは復興しません。
ミシシッピー川を堺に東側が壊滅し、細菌がばらまかれてしまった為に国の機能は西側に移り、生き延びた人間がいるにも関わらず東側は見捨てられてしまいます。主人公は陸軍兵士ですが、30才の誕生日に泥酔してしまったため東側に取り残されてしまいます。主人公はごく普通の人間。正義感があるわけでもなく、みんなで協力して社会を復興しようとするわけでもなく、だた単純に生き延びてそして西側へ渡るためにいろいろと努力をするだけです。その為には策略を企てたり、人を騙したりするのにも躊躇しません。悪人ではないけれども善人ではないのです。
終盤、主人公は川の向こう側へ渡ることに成功するのですが、接触した人間が紫色になって死んだことから、自分が細菌の保菌者であることを知ります。そして苦労して渡った川を再び泳ぎ、東側へと戻っていくのです。西側は徐々に復興していくのですが、東側は徐々に荒廃していきます。
そして物語は最後、主人公は物語の冒頭で遭遇した女性と再び出合い、一緒に生活をしようとするのですが、あくまで利用価値があるからだと考えた結果にすぎないという何ともいえない終わり方をします。
コメント
おお,久保書店!
Takemanさんの記事を見て,久保書店をチェックしましたら,ほんとに,まだ在庫があるんですねえ。
アダルト漫画を主力としている中で,Q-Tブックスが細々と生き残っているなんて,昔のSF的取り扱われ方のようで,味わいありますなあ。
タッカー以外では,バドリスとシマックが興味ありますね。注文しようかなあ。
私も,「長く大いなる沈黙」の方が,数段よいタイトルだと思いますが,ハヤカワSFシリーズも,矢野さんの訳なら,全く同じ訳なんでしょうか。
抄訳とかではないですよね。
多分抄訳ではないと思うんですが、まあ抄訳でも構わなかったというか、当時ならともかく、賞味期限切れの内容なので今となっては無理して読む程のものではありませんでした。
タッカーの作品だったから買ったんですが、タッカーでなかったら買わなかったでしょう。値段が値段なので損した気分は全くありませんが…。
Q-Tブックスでまだ在庫のあるやつは多分そんな感じのものばかりじゃないでしょうか。