- 著 柳 広司/
- 販売元/出版社 理論社
- 発売日 2007-04
Amazon/Bk1/楽天ブックス
『贋作「坊っちゃん」殺人事件』を書いたくらいなのだから、今度は『我が輩は猫である』の世界に謎を求めても全然不思議ではないけれども、実際に書いてしまうとなるといやはや脱帽するしかない。
しかし、タイトルに「漱石先生の事件簿」とあるくらいなので今度は夏目漱石が探偵役となるのかと思ったら漱石先生のところに押し掛けてきた書生さんが探偵役だったのにはちょっと拍子抜けしてしまった。
島田荘司の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』では漱石の目から見たホームズは変人と化していたけれども、この作品では漱石先生が変人と化している。しかも最初のうちは主人公の謎解きの役に立つようなことを、偶然であっても言ったりしているのだけれども、後半になるとただ奇妙な言動を吐くばかり。では全くの変人なのかといえばそうでもなく、時として意味深なことを言ったりもするので、このあたりはうまく作者に手玉に取られてしまっているのかもしれない。
後半になると謎がどんどんと小粒になっていくのはミステリとして読んだ場合、物足りないのだが、その分『我が輩は猫である』の世界の比率が高くなっていき、そして最終話のあの結末だ。ミステリとして物足りないのも許してしまえるものである。
コメント