- 著 アラスター・グレイ
- 販売元/出版社 国書刊行会
- 発売日 2007-11
四六判のハードカバーで上下二段組700ページと分厚いのだけれども、分量的にダン・シモンズの『ザ・テラー』と対して変わらないわけで、そう考えると分厚さに怯むことなんかないのだけれど、立て続けに分厚い本を読むのはなかなかしんどい歳になってきました。
しかし読み始めてみるとどうにも村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と比較してしまいがちになってしまいます。
もう二十年以上も前に読んだっきりなので単純に比較出来るものではないのですが、記憶に残っている面白さのレベルでは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の方が遙かに上です。
どちらの作品も作者の言葉によれば自伝的な要素が高く、相関関係がある二つの物語とSF的な要素。しかし『ラナーク』の三、四巻でのファンタジー度の具合は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の方が上だったし、一、二巻の主人公の駄目さ加減と嫌な奴度の高さは面白さを減少させてしまいます。
もちろんこれは単純な物語の面白さだけの問題であって、エピローグで作者がいきなり登場したあたりでのメタフィクション構造が展開されるあたりは読んでいてゾクゾクする部分で、活字を読む楽しさがあったりもします。
よくもまあこれだけいろんな要素を思いついてぶち込んだものだと感心するのだが、そのあたりは二巻を読めば納得が出来たりするので読み終えてからあれこれ思いめぐらしてみるのも楽しいものです。これだけむちゃくちゃやっていながら結末の付け方が非常にまともというか、後味がいいのには参りました。
でも25年もかけて書き上げたというあたりで、なんとなくヘンリー・ダーガーっぽい部分があるんだよなあ。
コメント
>なんとなくヘンリー・ダーガーっぽい部分があるんだよなあ。
イラストもダーガー風ですよね(笑)
うーん、絵の方に関しては比較してみたことがないので何ともいえませんが、二十五年もかけているんで完成する前に死んじゃってたらヘンリー・ダーガーと同じだよなあと思っただけです。
ただ単純に(笑)