鳥の歌いまは絶え

鳥の歌いまは絶え (1982年) (サンリオSF文庫)

  •  ケイト・ウイルヘルム
  • 販売元/出版社 サンリオ
  • 発売日 1982-07

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そろそろケイト・ウィルヘルムが再評価されるんじゃないのかという気がする。まあほとんど何の根拠もないけど。
アーシュラ・K・ル=グウィンはたまに翻訳されるし、ジェイムズ・ティプトリー・Jrの人気は日本ではまだ衰えていない。そうなるとやはりケイト・ウィルヘルムの居場所も欲しくなるというものだ。
少なくとも『鳥の歌いまは絶え』ぐらいは復刊されても良いんじゃないのかと思うのだが、松村栄子の『紫の砂漠』がこの本と雰囲気が似ているということを耳にしたこともあって、読み直してみるとけっこう地味だった。
過去の大破壊をかろうじて生き延びたわずかな人類も生殖能力が衰え子供の出生率も次第に減少しつつあった。滅びつつあるのは人類だけではなく、他の生き物もそうだった。
この状況をクローニングによって打破しようとするのだが、クローニングによって生み出された人類はクローン同士での特殊な共感能力があり、そしてそれ故に旧人類とは合間見ることが出来なく次第に敵対しあうようになっていった。
絶滅を防ぐためだったクローンという手段が、思わぬ形で失敗に終わるというとことん絶望的な状況、そしてクローン達もクローン技術の限界によって滅びゆく運命にあるという状況、ラストは一応の救いと希望があるのだけれども、あくまで今この瞬間だけの希望でもある。
まあ個人的には救いのあるラストだと思ってはいるんだけれども、それまでの展開が展開だけに素直にハッピーエンドを楽しめないところで、そのあたりも含めてなんともいえない余韻が残る。
うむ、確かに『紫の砂漠』と同じ薫りがした。

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