
- 著 ジョン・ボール
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 1976-05-31
主人公は黒人警察官、舞台となるのはまだまだ人種差別がしぶとく残る南部の田舎町。
となると否が応でも社会派ミステリとならざるをえなく、そのせいで長いこと未読だったのだけれども、『チャイルド44』を読み終えた後、急に読みたくなったので読んでみることにした。そうしたら、いや、自分がこの本に抱いていた偏見に気付かされて穴があったら入りたいくなるほど恥じ入ってしまった。作中における登場人物達の偏見を、なんと愚かなことだろうなどと笑っている場合ではない、この本は単なる社会派ミステリだけではなく、まごうことなき本格ミステリだったのだ。
ああ、まったくもって読まずに決めつけてしまうのは、偏見以外の何物でもないものだ。
ヴァージル・ティッブスが探偵役であり主人公であるともいえるのだけれども、彼の視点からの描写はなく、それ故に彼自身が、今自分がおかれた状況に対してどのように思っているのかわからなく、差別させられた側からの視点も全く存在しない。所々で彼の口からこぼれ出る程度である。ほとんど全て、差別している側からの視点である。それ故に、痛烈な批判という物は存在しないのだけれども、あくまでこの本はミステリなのである。どちらか一方に傾くことなく、両者のバランスをうまくとりながら、ヴァージル・ティッブスに論理的な思考を展開させ、そして少しだけ偏見のなくなったラストへとたどり着くのだ。


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