- 著 伊藤 計劃
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2008-12
世間では評価が高いのだけれども、どうにもあまり面白いとは思えなかった。
おそらくは単純に、作者との相性の問題に過ぎないのだろうけれども、物語の前半部分が駄目だったというのが致命的。
じっくり、しっかり、執拗に世界と人物を描く傾向のSF小説を読み続けていたせいか、『ハーモニー』における世界のの描かれ方のあっさりさ、人物の描かれ方のあっさりさが物足りなく感じられたのだ。
そもそも、日本だけではなく世界をまたにかけてあちらこちらと移動する割には、空間的な広がりが感じられない。
そして、読んでいて脱力してしまったのが、広島上空に飛行機雲で「ピカ」という文字という文字を書いた芸術家集団というエピソードが語られたところだ。
あまりに直近に起こった現実世界のネタが未来の話の中に登場されてしまうと、読んでいる方としては現実に引き戻されてしまうのである。使うならもう少し加工して使ってくれればいいと思うのだけれども、まあ仕方ないか。
とはいえども、マークアップ言語じみた記述の意味がわかりかけてきた中盤過ぎあたりから俄然と面白くなってきたのも事実で、前作の『虐殺器官』のその後の世界にこんな世界を持ってきたのには驚かされてしまった。
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