アッチェレランド

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

  •  チャールズ・ストロス
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 2009-02-25

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伊藤計劃の『ハーモニー』ってのはトマス・ディッシュの『キャンプ・コンセントレーション』だったんじゃないかと、ふとそう思った。
もっとも、綿密に読み比べてみれば類似点よりも相違点の方が多いかもしれないけれども、ずっと感じ続けていた何かがこれで腑に落ちたのも事実だ。
で、ギブスンの鮮烈×クラークの思弁ってのはちょっと間違いだろうと思った。どうみてもかけ算じゃないよなあ。
第一部は面白いんだけれどもねえ……第二部、第三部となっていくに連れて物語は加速していくのに、面白さは減速していく。
いやまあ、第一部の面白さを期待していくとつまらなくなっていくだけで、第二部には第二部なりの第三部には第三部なりのおもしろさってのはあるんだけれども、世界は激変していくのに対して主人公の子供、孫はだんだんとまともな人間になっていってしまうのだ。
ガジェットとジャーゴンは面白いけれども、グレッグ・イーガンとは対極にあるというか、思弁性があるように見えてあまりないんだよなあ。もっとも、ストロスにそんなものを期待する方が間違っているのだと思うのだけれども、クラークの思弁って書かれてしまうと、やっぱり期待しちゃうじゃないですか。
第一部の普通の世界におけるぶっ飛んだ人間という構図が第三部ではぶっ飛んだ世界における普通の人間という風になってしまって、第一部の主人公だって最後は普通の人間になってしまうのだ、親子三代の物語としては、これで良いのだといいたいのだけれども、なんか違うぞといいたくもなるし、気にしないようにしていた第一部での粗まで文句を言いたくなってしまう。
10年後に読んでどう思うか、ということを考えると今読むべき作品なのだろう。もっとも無理して読む必要もない気もするが。
少なくとも『ハーモニー』の先は見たかったけれども、『アッチェレランド』先はどうでもいいやと思ったよ。

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