- 著 眉村 卓
- 販売元/出版社 ぶんか社
- 発売日 2009-04-04
どういういきさつで復刊したのかわからないけれども、うーん、なんだろうねえ。
というわけで、眉村卓の『地獄の才能』を、ジュブナイルということでそれほど期待することもなく読んでみたのだが、期待していなかったということを差し引いたとしても想像していた以上に面白かったので驚いた。
主人公達の学校に転校生がやって来る。その転校生は、頭も良くってスポーツも万能なのだが性格の方はというと常に上から目線の嫌な奴だ。主人公と友達は、その転校生の何やら妖しげなところに気付くのだが、他の生徒達の評判はよく、主人公達は阻害されてしまう。ジュブナイルSFの典型的なパターンともいえるのだけれども、変に奇をてらった部分がないせいもあって、徐々に不穏な動きが見え始め、そして何が起こっているのか気が付いた時点では手遅れ的な状況になっているというサスペンス感はうまい。そして圧倒的な力の差加減を見せつけられ、それ故にこの状況を打破することなど出来そうもないんじゃないのかというところまで持っていきながらも、その状況の打破する手段が、これまた面白いのである。ある意味反則ともいえるけれども、しかしああこれはジュブナイルだよなあと思わせられる手段なのだ。そして、それだけではなく最後に教訓めいた部分というかこれぞSFという、これを読ませられた少年にとってはそれまでの価値観を崩壊させるようなビジョンを見せつけて終わるのだ。
うーん、眉村卓が凄かったのか、それとも当時の作家達が全体的に凄かったのか、あまりこの年代のジュブナイルSFを読んでこなかった身としては、もう少しチェックしておかなければいけない気になってきた。
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