経過報告15

9/19

目が覚めてすぐさま吐き気。
薬を飲んでおけばよかったと後悔する。
心が弱くなり、自分の体が持たなくなる危険性を感じる。
妻はいつもより遅めに起床。
「○さんをターゲットに変えたと言っているのが聞こえた」という妻の言葉に、今の絶不調状態もあわせて、妻の世界に引きずり込まれそうになる。この吐き気は階下からの攻撃なのか。
違うのだと強い意志を持つ。
妻はトイレへ。
トイレからの妻の独り言はあまり聞こえないが、相変わらず小声でしゃべっているのだろう。独り言も統合失調症の症状の一つらしい。
妻の一挙一動を観察する。
吐き気が続くがコーヒーと食パン半分を食べ、痔の病院へ。
病院の駐車場で、妻の入院予定先の病院へ電話。
症状を聞いてもらい、私自身の、妻の入院への意志を問われる。心が揺れる。
今の妻の状況を話、入院させたほうがいいのか聞いてみる。まだ心が弱いのだ。
話しているうちに決断をする。受け入れ病棟の都合の確認で連絡待ち。
来月、妻の楽しみにしていたコンサートがあることに気づく。おそらく行くことはできないだろう。どこまで回復してくれるかわからないが、入院させたら妻は私を許してくれない気がする。
電話待ちなので私の診断の方は受けるわけにもいかず、そのまま駐車場で待ち続ける。
午前中では決まらず、午後まで伸びることになったので、帰宅。帰りに栄養ドリンクとスナックバーと栄養剤を買い、ドリンクとスナックバーだけはその場で食べてアパートに帰る。
妻は実家の弟と電話中。
妻の妄想に肯定的な返事をしている様子に怒りを覚える。
が、必ずしも肯定しているわけでもなく、できるだけ穏便になるようにしているのに気づいて安心する。
妻と昼食を買いに買い物に出かける。
昼食後、妻は仕事へ。職場での対人関係があまり良好ではないようで、行きたがらない。
明日は休みなのでいいのだが、妻の仕事はあまり症状を緩和してくれそうもないみたいだ。
しばらくして病院の連絡が入る。
やはり、病院までは私のほうで連れて行かなければいけない。
父と弟に、妻を強制的入院させるために協力依頼の連絡をする。
母から何度か電話があり、こちらが望んでいないような言動を言ってくる。
途中で切ってしまってもいいから聞いてなどと言ってきたので、そんな話など聞きたくない、今にも心が折れそうなのだと叫ぶ。
妻の実家へ電話。
統合失調症や、薬への理解があるのであれば入院のことも話そうかと思っていたが、妻の頭を休めることが必要ということでは私と同じ意見であることはわかったが、薬への反発心と、車は運転できて料理もできて、おかしな言動は言っていないという言葉に、協力の可能性をあきらめる。
階下の住人が自分に攻撃をしてくるという言動のどこがおかしくないのだろうか。それとも私のほうがおかしいのだろうか。
様子をみながらしばらくはいろいろ試してみることにしますと言って電話を置く。妻のことを心配していることに代わりはなく、これが普通の態度なのだと思うようにする。
母から再度電話。
妻の実家からの非難が自分(母)のほうにくることを心配してのことだ。立場を変えれば言い分もわかるのだが、リスクのない賭けなど存在しないのだ。
自分(母)の保身に怒鳴りたくなる。昨日買った統合失調症の本二冊を実家へ持っていく。この人たちに頼めないと思いつつも、利用できるのであればどんな手段でもっても、利用しつくしてやればいいのだと思うことにする。
心がだんだん荒んでくる。
会社の社長に電話。来週木曜日まで休むとこを伝える。月曜日でもよかったかもしれないが、月曜日に自分の心がどうなっているのかわからない。
どうか、私に強い心と強い意志がありますように。
妻へお帰りのメール。少しでも妻の心に平穏がありますように。
妻が帰宅する。
「二日間しか行っていないけど止めることにした」
もう少し続けてくれていたらという気持ちと、これでよかったんだよなあという気持ちと半々だった。
明日電話して止めることを伝えるという妻に対して、「早く決めてよかったんじゃないの」と答える。
「歩いて食事に行こう」という妻に、あまり落ち込んでいない雰囲気なので一安心するも、妻のくよくよ癖は相変わらずなので、なんとかなればいいなあと思う。
さりげなく車道がわを歩いていたつもりなのだが、「○さん、車道の方を歩かなくてもいいよ。私が歩くから。○さんに何かあったときには体を張って私が守るんだから。車が来たって跳ね飛ばすわよ」
そんなに気負わなくってもいいよと心の中で思う。
初めて入った和食屋で、妻は、歩いてきたからアルコールが飲めるわねという。
妻にはアルコールは控えさせたほうがいいのはわかっているが一週間ぶりだし、二人で一杯のサワーなら、私が多めに飲んでしまえばいいかと、一杯だけ注文する。
注文した食事が来る。
「今年に入って私のやることは何でも続かないし、うまくいかないわね、充電しろってことかしら」
「そうだね、充電しろってことだよ」
「でも結婚してからあまりうまくいったためしがないわ」
そろそろ、くよくよ癖の危険信号を察知しなければいけないところなのだが、ほろ酔い気分なので、あいまいにうなずいてしまう。
「いい旦那さんに出会ったから、神様が焼もちをやいているのかも」
寿司セットを頼んでいてよかった。
わさびが利いてしまったと、流れ落ちそうになる涙の、言い訳にすることができた。
ちょっと遠回りして帰ろうという妻に、食欲が無いのに酢飯なら食べることがだろうと頼んだ寿司セットの量の多さにおなかが苦しくて仕方が無いのだが、無理して付き合う。
食いすぎて苦しいと言ったおかげかそんなに遠回りしなかったので助かった。
妻との会話も弾む。
ひょっとして回復に向かっているんじゃないのだろうか、入院はさせなくってもいいのではないのだろうか。入院させてしまえばこの幸せな時間も失われてしまう。
私は妻と、こんなたわいの無い話をしながらゆっくりと日々をすごしていたいだけなのだ。これは贅沢なのか。
「私の目で見ていることが盗み取られているの」
「トイレで拭くときだって盗み見されないように見ないようにしているし、お風呂だって自分の体を見ないようにして洗っているの」
男ならば平気だろうけれども、それはさぞかし苦痛だろうと思う。
そんなことは起こり得ないよと否定してやりたいけれども、言葉が出ない。
明るいから盗み見されるから暗くしましょうと妻は明かりを消す。テレビの明かりだけだ。
いい言葉がでないままに時間だけが過ぎていく。
気持ちが落ち着いたのか、やっぱり暗いと変ねと妻は明かりをつける。
歯を磨いて寝ようと妻を促し、私は処方してもらった薬を妻に隠れて三分の二だけ飲む。2日間はそれだけにしてくださいといわれたのだ。隠れて飲む状態で粉末の三分の二、これは面倒だ。
妻と布団に入る。

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