『生まれながらの犠牲者』ヒラリイ・ウォー

題名からして、読み終えてやるせない気持ちになるのが必至な物語。
母親が仕事から帰ってくると、13才になる娘がどこにもいなかった、いつもなら家にいるはずなのに。母親は警察へ失踪届を出す。
裏表紙のあらすじを読んで、母親の視点から物語が始まるものだと思っていたら、シリーズの主人公、フェローズ警察署長の団欒風景から物語が始まった。
サスペンスを盛り上げるのであれば、母親の視点から始めるのが一番だと思って意外に感じたのだが、読み終えてみるとこういう形でしか始めようがないことが良くわかった。
コリン・デクスターのモース警部ほどではないが、フェローズ警察署長も次々と仮説を立てて、捜査し、仮説は破れていく。そして徐々に失踪した少女の母親の過去が明るみになっていく。
真犯人が明らかになるのはラスト10ページ。そこから数ページに渡って真犯人の心情が吐露されるのだが、その絶叫に近い形で吐き出された吐露は、なんとも耐え難い切なさとやるせなさで胸を痛ませる。
そして、この本は1962年に書かれた小説だ。こんなにも早く、このような話が書かれていたとは驚きだった。

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