『ブルー・ドレスの女』ウォルター・モズリイ

物語の雰囲気は悪くないし、主人公の造形も悪くない。主人公は毛嫌いしているが腐れ縁的に主人公を助ける主人公の悪友の存在もなかなか良い。
主人公が黒人であること、そして随所で主人公や主人公の友人たちがその事、つまり黒人であるということにおける偏見や差別や生き方について自覚をさせられる部分も物語全体に深みを与えている。
が、今一つ突き抜けた部分が無かったのが残念というか物足りない点だった。
ミステリ小説で「○○の女」というような題名がつくと経験上、ファム・ファタール物になる確率が高いのだが、『ブルー・ドレスの女』もそうだった。
ファム・ファタール物だから駄目というわけじゃないが、時は1948年、主人公はしがない機械工の黒人で相手は白人となると結末は目に見えている。
主人公が追い求める謎の美女の正体は「運命の女」になるか「魔性の女」になるかどちらかなわけだが、美女の正体が、事件の意外な真相とか意外な犯人とか意外な動機とかそういったミステリ的な部分の意外さを1馬身ほど突き抜けていたのに驚いた。
少なくとも、もう一冊は読んでみたいという気にはさせられるのだが、シリーズとしての翻訳の方は中断してしまっているし、続編も見事に絶版なのが残念だ。

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