『ソーシャル・ネットワーク』という映画が評判を呼び、日本でも Facebook が流行し始める一方で、エジプトでは Facebook を通じて騒乱が起き、エジプト政府はインターネットの規制を行うけれども、世界中のハッカーたちがその規制を無効化するのに手をかしたりした。
で、Facebook は Facebook で実名ではないアカウントの抹消をしたりと、自由を求める人たちと規制をする人たちのつばぜり合いが行われている。
そういった意味ではコリイ・ドクトロウの『リトル・ブラザー』はなかなかタイムリーな時期に翻訳出版されたはずなのだが、不幸なことに東日本大震災が起こってしまった。しかし、「自粛」問題といい、自由な発言が許されない雰囲気をともなっている今現在、そして震災におけるネットの影響力を実感せざるを得なくなっている人たちは、読む余裕、考える余裕のあるならばこの本を読んでみるのもいいのかも知れない。
近未来のアメリカ、サンフランシスコでテロが起こり、その結果、国家安全保障局が大規模な監視システムを作り、市民を監視し始めるという物語だ。
近未来といえども今の現実の世界よりもほんの少し技術が発達しているだけで、魔法のような超技術があるわけではない。主人公は17歳の少年で、自由を取り戻すために国家安全保障局に立ち向かうけれども、天才少年でもなく、あるのは仲間と勇気だけだ。
ヤング・アダルト小説として書かれた本書の読後感はロバート・A・ハインラインのジュブナイルと非常によく似ている。特に『レッド・プラネット』あたりと互換性を持つといってもいいかも知れない。この本を読み終えてその事に気付いたわたしはコリイ・ドクトロウが前よりもまして好きになった。
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