出版されてすぐに買ったものの今までずっと積読だったから、かれこれ十五年近く積読のままだった。
この先十五年くらい積読が続いてもおかしくはない情況だったけれども、一時の気の迷いで手にとって、そしてアッという間に読み終えてしまった。
ジョン・キャンベル・Jrの『月は地獄だ』のような地球外世界という極限状況でのサバイバル物として紹介されているけれども、語り口としてはヴィクトル・ペレーヴィンの『宇宙飛行士オモン・ラー』を彷彿させる語り口と展開だったのが意外だ。
主人公は実験ロケットの宇宙飛行士の一人。ロケットの打ち上げには成功するけれども、ロケットの噴射パネルの一部が損傷し、主人公はそれを修理するために宇宙服を着て船外へ出る。損傷したパネルを取り外し、ふたたびエアロック内に戻って外側のドアを閉めている最中に内側のドアが開いてしまい、主人公以外は全員死んでしまう。
その時点で主人公の生存確率もきわめてゼロに近くなってしまうが、主人公は火星への航路をとり、火星に不時着。そこで持てる知識を総動員して酸素を作り、水を作り、サバイバル生活を行う。
レックス・ゴードンが描く火星は植物や生物が棲息していたりするので、宇宙でのサバイバルといってもそれほど過酷ではなく、まあ植物すら存在しない設定にしてしまうと主人公を生き延びさせることは不可能なので仕方がないが、そのせいでハードSF的なものを期待して読むとがっかりしてしまう。
この本を買った当時はそういう系統の話であることを期待していたので、いままで積読だったのは結果として良かったかもしれないが、だからといって生ぬるいサバイバル小説の部分が面白かったのかといえばそんなことはない。アッという間に読み終えたのは前半部分は適当に読み飛ばしてしまったせいだ。
題名からしてフライデーであるし、途中でも主人公がロビンソン・クルーソーについて言及するので、いつフライデーが登場するのか、それはどんな形なのかが興味の一つだったが、終盤になってフライデーの意外な姿と、それまでのサバイバルSFとはうって変わって思弁SFに切り替わってしまったことに驚いた。
その試みが成功しているかといえば失敗しているけれども単なる火星サバイバル小説かと思っていたら、ロビンソン・クルーソーに対する返歌的な部分といい、終盤で明らかにされるビジョンといい、骨太なSF小説であったことは意外だった。
『宇宙人フライデー』レックス・ゴードン

コメント
この作品もなつかしいのでコメントさせていただきます。30年以上前に読んだ本だったと思いますが,内容がこれほどのものだったと,全く覚えていませんでした。確かまだハヤカワファンタジーの頃のもの。デフォーの「ロビンソン・クルーソー漂流記」も蔵書日記に載せていましたが,それはSFを読んだときのセンス オブ ワンダーに近いものがありました。たまたま,きょう書いたブログが「小説世界のロビンソン」だったので,暗合を感じます。最近は昔ほど小説を読むことが少なくなりました。このところ,アルファ・ラルファさんのように小説を読んで楽しむことを忘れていたことに気のついた次第です。
mitirofさん、こんにちは。
『ロビンソン・クルーソー』はサバイバル冒険物としても楽しめますが、それ以外の読み方というものもできますね。最近完訳版とうたった物が出たのでいつか読み直そうかと思ったりもしています。
『小説世界のロビンソン』は未読なんですが、『地獄の読書録』は一時期ガイドブックとして重宝させてもらいました。『小説世界のロビンソン』のほうも面白そうですね、見つけたら読んでみることにします。