いままで、いがらしみきおが他人の原作でもって漫画を描くという可能性など考えたこともなかったし、小説家としても活躍している山上たつひこが自分で小説として書こうともせず、ましてや自分でコミック化もせずに原作者として提供するということも考えたこともなかった。僕にとっては両者とも自分一人で作品を生み出す自己完結している作家というイメージが強かったので、この作品が始まったときにはずいぶんと驚いたものだった。
で、なおかつ扱っている題材がギャグではなくシリアスな問題なのだから期待しない方がどうかしているというものだ。
とある地方都市で凶悪犯罪を犯した元受刑者を出所後に受け入れる計画が始まるのだが、その計画に携わるのは市長を含めて三名のみ。それ以外の人にとは元受刑者本人も含めてその計画を知らされてはいない。
あくまで刑期を終えた犯罪者に新たな人生を送らせることを目的とした計画なのだけれども、はたして受刑者は更正したのかという問題、凶悪犯罪を犯したということからくる恐怖と偏見、物語は異様な緊張感を維持したまま進んでいく。
しかし、この物語が真に恐ろしいのは、更正計画に携わった三人の登場人物が持つ恐怖と偏見を描きつつも、彼らの恐怖と偏見はそのまま読み手である読者に跳ね返って来るということだ。
僕自身も彼ら三人と同じように作中の元受刑者に対して、恐怖と偏見を持ちながらこの物語を読み続けているのに気づかされるのだ。
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