道尾秀介というとラストのどんでん返しが付き物のイメージが大きいので、短編であってもさぞかし意外な結末とか鮮やかなどんでん返しとかを駆使した話になっているだろうと思って読んだら、驚かされた。
そんな物は全くと言っていいほど無いのだ。
もちろん、作者が読者に対して仕掛ける仕掛けがまったく無いわけではない。しかし、そんなものは主眼ではなく、おまけに過ぎないのである。
それが故に、ミステリというよりもホラーといったほうがいいし、どちらかといえば怪談と言った方がいいのだろう。
第一短編集がミステリではなく怪談であるということ自体が驚きだ。
「ケモノ」は読み終えてどこかで見たような気がしたのだが、佐藤智一の『ただいまっ!』の、たしか、第一話が同じような話だった記憶がある。
現在から過去へと日記が遡っていく「冬の鬼」は夢野久作の「瓶詰の地獄」と同じような構成。「瓶詰の地獄」はそれぞれの手紙の時間の間隔が長いのだけれども、こちらは七日間と短い。短い分、密度が濃く、一気に彼岸へと連れて行かれそうな間隔に陥る。
全体に、どことなく都筑道夫が書く怪談と同じ雰囲気が感じられたのは僕の気のせいかな。
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