『隠し部屋を査察して』は異様に面白かったのだけれども、このスタイルでの長編を読まされるのはちょっと勘弁願いたいというか気分の良い時にしたいよなあと思い続けていたのでマコーマックの第一長編『パラダイス・モーテル』は、そのうちいつか読めばいいやと思っていた。
そうこうしているうちに国書刊行会から『ミステリウム』が出て、これは長編だったけれども、短編ほどビザールっぽさは少なく、メタフィクション的な部分も含めてミステリとして面白かったので、マコーマックの長編も大丈夫なんじゃないかという気がし始めていたところへ『パラダイス・モーテル』が文庫化された。
『隠し部屋を査察して』に収録されている「パタゴニアの悲しい話」を含めて、いくつかの短編が組み込まれた、純粋な長編ではなくいくつかのエピソードが連なる連作長編である。
グロテスクな部分はちょっとばかりジャック・ヴァンスっぽいよなあと思いつつも、やりたい放題やって、長編としての体裁を整えようとすればこうするしかないだろうなあと思う仕掛けで、むちゃくちゃな割には計算し尽くされた構成で、読み終えて、よくやるよなあとにやにやと笑いが止まらない話だった。
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