『無縁塚<浪人左門あやかし指南>』輪渡颯介

  • 著: 輪渡 颯介
  • 販売元/出版社: 講談社
  • 発売日: 2011/12/15

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メフィスト賞を受賞した作家であるのにメフィスト賞受賞作家らしくない堅実な作風なせいか今一つ地味な感じがしてしまうのはやっぱり損をしているよなあと思ってしまう。せめて名前だけでも特異な名前の方が良いだろうと思いきや、今までは「わわたりそうすけ」だったのが今作の『無縁塚』から「わたりそうすけ」と読ませるようにしたらしい。こういう改名の仕方は珍しい部類だと思うが、これでさらに普通っぽくなってしまった。
探偵役が、論理的な思考の持ち主でありながら部類の怪談好き、ワトソン役が怪談嫌いの恐がりやというフォーマットはさすがに定型すぎて目新しさが感じられないけれども、とある一軒家にまつわる因縁だらけの怪異に対して珍しく探偵役が、この家には近づかない方がいいなどと、そこで起こった怪異を肯定するかのような発言をする展開は、怪異が論理的に解体されるのかそれともされないのかという危うさを伴って、最終的に見える全体像と解決のさせ方が心憎い。この解決のさせ方はこの時代ならではのものだよなあ。

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