『地球0年』矢野徹

  • 著: 矢野 徹
  • 販売元/出版社: 早川書房
  • 発売日: 1973/05

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197X年、偶発的に起こった水爆戦争によって米中ソの三大国は壊滅してしまう。
この本は1964年から1965年にかけて雑誌連載され、1968年に立風書房から出版された。僕が読んだのは1973年のハヤカワ文庫版だが、1960年代に書かれた十数年後の暗黒的な未来。
SFはかならずしも未来予測の物語というわけでもないのだが、当時は十数年後に起こる第三次世界大戦というのはリアルな現実でもあったのだ。
米中ソが壊滅状態となっているが、作中では日本にも核ミサイルは落とされ、東京を含めた南関東が壊滅してしまう。
そんな中、国連の要請により自衛隊が、混乱の状況下にあるアメリカに派兵され、治安維持に努めるというのがこの物語なのだが、事実上は自衛隊によるアメリカ占領と変らないという点が、この物語の複雑さでもあるし、それを隠そうともせず、かといって礼賛するわけでもなく平等に描いているところが矢野徹の誠実さだと思う。
人種差別問題から、被爆者差別、情報が遮断された状況下での人々のおろかな行動があからさまに描かれているので、読んでいて暗い気分にさせられる。とくに、被爆者の口から放射能が吐き出される、などというデマによって暴徒化される様子は、去年起こった3.11の原発事故後、原発事故での被爆者は放射能を帯びているのでコンクリートで固めて埋葬しなければならないなどといったことを平然と語る人々がいたことを思い出してしまった。
人々は、歴史から何も学んでいないのである。

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