『悪党』薬丸岳

  • 著: 薬丸 岳
  • 販売元/出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/9/27

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薬丸岳の小説を読むのはこれで二作目。
いつも非常に難しい問題をミステリという形に仕上げていて、その題材は僕好みでもあるけれども、題材が題材であるが故に続けて読むのはしんどいので間を開けて読むことになる作家だ。
どこか沢村凜と共通の資質を持っているようにも思える。どちらかといえば沢村凜は抽象的な問題を扱い、薬丸岳は具体的な問題を扱っている感じだ。
今回は、犯罪被害者と犯罪加害者の関係を扱っていて、被害者は加害者を許すことができるのかというのが今回の大きな問題であり、なおかつ連作短編という形をとっているので、主人公は様々な形で、多数の犯罪被害者と犯罪加害者と関わりあいを持つことになる。
つまるところ、それは犯罪被害者と犯罪加害者との問題に答えなど無いということであり、同時に犯罪被害者と犯罪加害者の数だけ答えが存在するということでもある。
そしてこの物語が興味深い点は、被害者側の視点だけでなく加害者側の視点も描いていることだ。それ故に被害者と加害者の問題は複雑になり、少しばかり安易すぎる結末になってしまっているかもしれないけれども、あくまでこれはエンターテインメントな物語に過ぎないことを思えば、これ以上の深みを求めるのは無い物ねだりであり、これ以上のことは物語から現実へと求めるべきことなのだろう。

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