- 訳: 山高 昭
- 著: アーサー・C. クラーク
- 販売元/出版社: 早川書房
- 発売日: 1986/09
電子書籍化されていたので読んでみたのだが、ハインラインのジュブナイルが好きな身としては、クラークのジュブナイルは少し物足りない。
しかし、クラークとハインラインは御三家というくくりで同レベルで語られることが多いけれども、やはりクラークとハインラインとでは資質が違うわけで、ハインラインのジュブナイルのようなものをクラークのジュブナイルに求めるのは根本的に間違っているのだ。
ただ、物足りなかったといっても、驚くべきはこの小説が1954年に発表されたものであるということだ。
有人宇宙飛行はもちろん、人工衛星の打ち上げすらも実現されていなかった時代に、ここまで正しい宇宙空間と宇宙ステーションの姿というものを描いているというのは恐れ入るほかしかない。
だからワクワクするような物語を読むというよりも、クラークが描いてみせる風景を読み取るというのが正しい読み方かもしれない。
主人公の少年がクイズ番組の優勝商品として宇宙ステーションへの旅行の権利を獲得し、そして宇宙ステーションでの滞在と生活、そして旅の終わりが近づいて地上へと帰っていくまでの物語なのだが、読み手も主人公と同じような体験をしているかのような気分にさせられ、そして主人公が地表へと降りていくシーンでは、主人公と同様に宇宙ステーションとの別れに対して寂しい気分にさせられる。
主人公が地上へと帰還していく長い長いシーンは秀逸である。
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