『国枝史郎伝奇風俗/怪奇小説集成』国枝史郎 怪奇小説編

  • 著: 国枝 史郎
  • 販売元/出版社: 作品社
  • 発売日: 2013/3/30

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けっこういい値段なんだけれども、エドモンド・ハミルトンの「獣人」目当てに買ってしまった。
国枝史郎は『神州纐纈城』しか読んでいないのだが、その国枝史郎がこういうものを翻訳していたとは知らなかった。
解説を読むと、たまたま手に入れた雑誌のなかから適当に見繕って翻訳したらしいのだが、結果としてみるとなかなか粒ぞろいというか、今の時点で読んでみてもハミルトンの「獣人」以外の作品も十分に面白い。
怪奇小説というくくりなので、ハミルトンの短編もSFではなく怪奇小説なのだが途中までの展開はSFっぽい展開をする。ある夜、主人公のもとに、主人公の恋人の兄から自殺をほのめかす電話がかかってくる。彼は特殊な光線を当てることで人間を先祖返りさせる研究している博士の助手だったのだが、どうやら自分自身が獣人と化してしまったらしい。
主人公は恋人とともに研究所へ赴くのだが、すでに時遅く研究所では、猿と化した恋人のお兄さんは拳銃で自殺をしていた。短編なのでそれほど派手な展開はしないけれども、先祖返りというアプローチはハミルトンの他のSF作品でも登場する要素であり、SF的なアプローチの仕方をするのだが、事件の真相はそこから予想外のところに着地して、単なる怪奇小説に終わっていないところが面白い。
他の作品に関しても、怪奇小説という意気込みで読むと意外に堅実的というか単なる怪奇小説として終わらず、怪奇小説というよりも謎解き小説といったほうがいい話があったり、国枝史郎の翻訳文も独特の雰囲気があって予想以上の掘り出し物だった。

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