知るということの究極的な問いと答えを求める物語。
SFであるということを意識したせいか、今までであれば天才とか人外の存在といった形で説明されていたものが、現在の技術の延長上における技術革新によって成立したという説明がされている。まあ、その一方でやはりその技術をつくり上げるための天才が登場するのはやっぱりといえばやっぱりなのだが、社会に敷衍した技術というものを描いているわりに、描こうとする部分はその変貌した社会そのものではなく、あくまで知るということであって、社会の有様はそれほど深くまで描かれていないところが物足りない。というか今ひとつリアルさが感じられない。いっそのこと超天才が神様を作ってしまってその神様が究極的な問題を解こうとする展開でも良かったかもしれない。
僕は野﨑まどの人を喰ったような話と結末が好きなので、わりとこの人にSF的な設定というものを求めてはいないのだ。
そういう点で、物足りない部分もあったのだが、しかし、今回のお話はいろいろな意味で良かった。
人を喰ったような結末であり、究極的な答えを知った人類の行く末を描きながらも誰も結び付けないような結末であり、そして多分、やさしさに満ちた結末なのだ。
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