さすがは『テルマエ・ロマエ』を描いた作者だけあって、その視点が面白い。
日本で生まれ育ちながらも、若いうちに日本を離れ、長いこと海外で生活をしている日本人の視点から日本という国を見なおしたという形のエッセイなのだが、実際に読んでみると日本と他の国との違いの部分において、その基準が他国よりではなく、どちらかといえば日本を基準よりな部分があり、必ずしも日本が他国と比べて異質であるというような視点ではない。そのあたりのバランス感覚がちょうどいいので読んでいて楽しいのだ。
例えば、海外では離婚の手続きが長引くうちに耐えられなくなってよりを戻したという人達も沢山いるという話などは、日本ではちょっと考えられない話だし、その一方で、なんだか微笑ましい話でもある。日本でも離婚の手続きが長引くという状況は起こりうる出来事ではあるが、だからといって離婚するのを止めたという話はあまり耳にしない。
その他に、日本の移民達は恐らく到達したそれぞれの新しい土地で、必死にその土地との「同化」を心掛けただろうが、イタリア人はきっと違った。という話も面白い。
このように、どちらが良いか、どちらかが悪いかという善悪で決めつけてしまうのではなく、どちらを選ぶかはつまるところ個人の問題に行き着くし、その結果はお国柄というよりは個人の個性の問題になる。
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