島田荘司の『占星術殺人事件』に真っ向勝負したミステリ。
という趣がある。何しろ、作中でアゾートという言葉が登場するし、直接の名指しではないもののアゾートという言葉が使われるバラバラ殺人のミステリに関して言及もある。
物語早々、マンションの一室の浴室で首のない男性の死体が発見され、何故、犯人は首を切断しそして持ち去っていったのかという謎が捜査の焦点となる。そしてなかなか手がかりがつかめない中、今度は胴体の無い死体が発見され、さらには手足が切り取られた死体と、合計六人の人物が殺される。
その一方、同時進行する形で、もう一人の人物による物語が描かれる。
信じられないことだが、この人物は、犯人が持ち去った死体のパーツを組み合わせて甦った男だというのだ。
まるで、ポワロー&ナルスジャックの『私のすべては一人の男』を彷彿させる展開だ。あちらの方は人体の移植手術が確立された時代という設定だったのだが、こちらはそのような設定ではない。作中で理論的には可能だという説も描かれるが、実例はまだ無いという設定でもある。ではこの物語はその実例を目の当たりにするSF的な展開をするのだろうか。
実際のところはその辺りの真相は終盤までいかないうちにわかってくるし、犯人も目星がつくうえに、動機も予想がつく。
が、それらを踏まえた上で、この物語にどのような決着をつけるのだろうかという部分がサスペンスとしての面白さで、うーん、こんな結末でよかったのだろうかという虚しさが残る終わり方は、悪い意味ではなく、いい意味で後味の悪さを残す。
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