決断の時

義父の葬式がなんとか終わったその翌日、今度は自分の父が腸閉塞で入院してしまった。
前日からの腹痛で、近所の診療所で診てもらったところ腸閉塞の疑いが強いということでそのまま救急車で入院のできる病院へ搬送された。
腸閉塞を起こしてお腹が痛いということ以外は今のところ大丈夫なので、元気といえば元気なのだが、突然の入院なので、入院の準備が整っていなく、タオルや下着などを揃えなければいけない。おまけに最初の診療所に車を置きっぱなしにしたままなので、それも取りに行って来なければいけないが、とりあえず、主治医の説明と今後の治療方針を聞いた後でなければ行動できない。
頭のなかで、それらにかかる時間を計算してみる。
車は後回しにすれば何とかなりそうだ。
しばらくして主治医の説明があって、その後、父が処置室へと入っていった。病院での対応は弟にまかせて、僕は実家へ入院の準備をしに行く。
まず、何処になにがあるのかがよくわからない。
おおよそ、何処になにがあるのかは想像がつくのだが、タオルにしろ、下着にしろ、洗濯済なのかそうでないのか、判別がつかないものが多い。そもそもパンツが見つからない。
とりあえず、洗面用具を揃えようとするのがだ、洗面台にある歯ブラシは、もう、替えたほうがいいようなしろものだ、新しい歯ブラシがあるかどうか探す。
換気扇がつけっぱなしだったり、窓が開きっぱなしのところがあるので、消したり、閉めたり。
どこに何があるのか、揃えた一式を入れる袋をさがしたりと、あたふたしている様子は、妻を入院させた時とおんなじだった。あの時は、入院させるという行為まで結びつけることで手一杯で、その後に入院に必要な物を一式揃えるということをしなければいけないことまで気が回らず、そのことに気付かされたときには途方にくれたが、さすがに今回はあの時ほど、途方に暮れてはいない。入院するのが男だからということもあるだろう。同じ男なので、最低限なにが必要なのかはおおよそわかる。
母が手術で入院した時に、父はどうしたのだろうかと思ったのだが、その時は母は自分で準備していたし、最後に倒れた時は、入院準備をする必要が出る前に亡くなったので、僕がしたような苦労は父はしなかっただろう。
入院のための一式をとりあえずは二三日はなんとかなる分、そろえて、また病院へ戻る。
次に考えなければいけないことは、今後の治療のことだ。今の治療で良くなれば問題はない。しかし、そうでない時、決断をしなければならない。
過去に大腸がんで二回、開腹手術を受けていて、本人が、三回目はもう体力が持たないだろうから、その時には何もせず尊厳死を望みたいと言っていたので、今回も開腹手術は本人が望んでいない。
鼻からイレウス管を通して様子を見るということになったのだが、一週間経って、改善されなければ決断をしなければならない。
母の時は、脳幹部分で出血し、意識もないうえに手術もできないという状況だったので、延命という選択肢はほぼなく、その決断は比較的楽だった。
しかし、今度は違う。
腸閉塞なので、食事をとることが禁止され、点滴だけの状態となる。そこから一週間後となると、体力も落ちているし、空腹の飢餓状態がどこまで父の精神を傷つけているのかわからない。
父がその時、手術を望めばいいのだが、それでも望まなかった場合、父の意志を尊重するのか、しないのか、尊重した場合は苦しみ続ける父を見守らなければならない。かといって尊重しなかった場合、助かるのかといえば保証はできない。
僕自身が後で自分の決断に後悔するのはしかたがない。
どうするのが父にとって一番いい方法なのかを考えるべきなのだ。

コメント

  1. バブ より:

    今晩は~
    大変ですね。
    他人事ではなく、考えさせられました。
    どちらさんも、お大事になさってください。

  2. Takeman より:

    バブさん、コメントありがとうございます。
    父の方は、今の治療で良くなることを祈るばかりです。

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